出版社内容情報
彼女の夫は「大祐」ではなかった。夫であったはずの男は、まったく違う人物であった……。平成の終わりに世に問う、衝撃の長編小説。愛したはずの夫は、まったくの別人であった。
「マチネの終わりに」から2年。平野啓一郎の新たなる代表作!
弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。ある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。悲しみにうちひしがれた一家に「大祐」が全くの別人だったという衝撃の事実がもたらされる……。
里枝が頼れるのは、弁護士の城戸だけだった。
人はなぜ人を愛するのか。幼少期に深い傷を背負っても、人は愛にたどりつけるのか。
「大祐」の人生を探るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿が浮かびあがる。
人間存在の根源と、この世界の真実に触れる文学作品。
平野 啓一郎[ヒラノ ケイイチロウ]
著・文・その他
内容説明
彼女の夫は「大祐」ではなかった。夫であったはずの男は、まったく違う人物であった…。平成の終わりに世に問う、衝撃の長編小説。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
1173
平野 啓一郎は、新作中心に読んでいる作家です。本作は、戸籍交換家族ミステリでした。戸籍交換・売買、無戸籍等、戸籍に関する闇は、かなり深いのかも知れません。2018/10/19
鉄之助
1053
誰にでもある、”消したい過去”のひとつやふたつ。いやそれ以上の忘れたい人生の数々…。私にもいっぱいある! そこで登場した戸籍交換ブローカー。別の男として生きる羨望を、実にリアルに感じられた。「誰も”本当”の名前を知らない」ある男、を追跡した城戸弁護士の執念にトキメキながら読み進めた。「その偽りは、やがて成就した愛によって赦されるだろうか?」。それを本物の愛という…。いつまでも心に響くテーマだった2022/11/22
bunmei
1021
彼の作品からは、人にはいくつもの顔がある、『分人主義』の様な考え方が感じ取れる。私達は、相手次第で様々な自分になり、それが自然であることを受け入れるべき、と訴えてくる。本作でも、数人の男が戸籍交換を繰り返し、生い立ちや家族を完全に捨てる中で、過去の自分とは決別して、新しい人生を歩むという話であるのも頷けます。また、弁護士・城戸も在日三世としての拘り、美涼への恋慕、妻との溝等、その時その時での様々な顔が浮き沈みします。しかし、その事は人が人として生きていく為には、赦されるべきものでもある、と思いました。2019/01/29
ウッディ
912
事故死した夫が別人であったことを義兄から伝えられた里枝。相談を受けた弁護士の城戸は、夫の正体そして本当の谷口大祐の行方を調べ始める。難しい表現もあるが、心の襞を丁寧にかつ簡潔に表現する平野さんの文章力はさすがで、久々に文学作品を読んだ気がしました。過去も含めた自分の境遇を捨て、別な人の人生を生きた男が初めて感じた安らかな日々、愛する父が実体のない別人だと知らされた悠人の心境を思うと切なく、自分ならもう少し上手く生きることのできる別な人生があったかもしれないという城戸の呟きは心に染みました。面白かったです。2019/03/12
ヲム
867
ミステリー小説なんだけど、その中にも色々深い言葉が出てきたりと…特に三勝四敗は響きました! 作品中の曲を調べて聞いてみると、より作品の深みが出ました!2018/11/03