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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はるわか
23
アメリカが綻び始めたのがいつなのかだれにもわからない。1960年前後以降の生まれであれば、成人してからというもの目眩のするような揺り戻しのなかで生きたてきた。旧来の権力機構の有効性を保っていた規範がゆらぎ半世紀近くにわたり威信を誇ったルーズヴェルト共和国は崩壊した。そこに生じた空白を満たしたのはアメリカ社会の源流ともいうべき力-組織化されたマネーによる席巻である。個人の自由が高まるにつれ人々は孤独に生きるようになった。綻びゆく社会においては、すべてがうつろい確かなものは何ひとつない。あるのは声ばかりだ。2017/02/27
くさてる
12
700頁近くある厚い本ですが、様々な人々の人生が時間の流れに沿ってランダムに切り替わっていくのでテンポよく飽きることなく読み進めることが出来ます。大統領選、サブプライムローンの破綻、アメリカ郊外の荒廃と貧富の拡大、など様々な重要なテーマがありますが、それらすべてがアメリカという一つの国を形作るパーツとなっていて、なおかつそれを成り立たせるのがひとり一人のアメリカ人なんだな、と感じました。読む人によって、この本の登場人物のだれに惹かれるかが分かれると思います。それだけ、多様な生き方が紹介されています。2014/11/08
ケニオミ
9
貧富の差が拡大し、民主主義が機能しなくなったアメリカ。その縮図として、政治家を裏から支えるスタッフ、バイオ燃料を用いて故郷の再生を図ろうとする企業家、廃れゆく故郷の再生を夢見る市民活動家、自由放任主義者のベンチャー・キャピタリストの4人の活動を四半世紀追い続けた力作です。中流階級の没落が、政治家と金融家のもたれ合いによって齎され、人々の貪欲さにより加速されていった過程がよく理解できます。本書にも記されている「ウォール街を占拠せよ」運動の結末が、現在の民主運動限界を示しているようで虚しさを覚えました。2014/09/08
まめタンク
3
2020年150冊目。たぶんアメリカ人でない我々にとって、オプラウィンフリィー(アメリカのみのもんた)やジョーバイデンの話を読んでもピンとは来ないです。唯一、ピーターティールに関しては共感出来るかもしれません。本書は簡単に言えば、アメリカの歴史を登場人物の歴史と絡めながら紐解くという事です。この本の一番の魅力は、「空気感」です。第二次世界大戦が終わり、60年代〜70年代、世界で最も豊かな国と呼ばれたアメリカ。しだいに格差が拡大し、医療さえまともに受けられない。綻びゆくアメリカの空気感、、。2020/06/07
sasha
3
4人の市井のアメリカ人を中心に、政治や時代の変化に翻弄されながらも前向きに生きる人間群像を描いた大作。なかでも産業の空洞から町が衰退していったヤングスタウンの話は他人事ではない。日本でも企業城下町の衰退が話題になったこともあるもの。絶望もあるし、苦悩もある。でも、僅かな希望でもあれば人は前向きになれるんだよな。きっと「強いアメリカ」でなくてもいいのかもしれない。普通の人々が普通に暮らせる。それが一番なのじゃないかな。「世界の中心で輝く日本」じゃなくてもいいのと同じでさ。2016/09/03