内容説明
神は死んだ―。既存の権威と価値観を痛烈に批判した十九世紀の哲学者フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェは、神による価値づけを失った人間がどう自分の生を肯定すべきかを考え続けた。己の境遇をどのように受けとめ、いかに力強く創造的に生きるかという彼の生涯の問いは、時代を越えて、いま私たちの深い共感を呼ぶ。二大思想「超人」「永遠回帰」を軸に、『ツァラトゥストラ』の書に込められた「悦びと創造性の精神」を紐解く。
目次
はじめに 人間は“創造的”に生きよ
第1章 ルサンチマンを克服せよ
第2章 「神の死」から「超人」へ
第3章 永遠回帰とは何か
第4章 現代に「超人」は可能か?
対談 西研×斎藤環―「しなやかな超人」か「完璧なひきこもり」か
読書案内
ニーチェ略年譜
著者等紹介
西研[ニシケン]
1957年、鹿児島県生まれ。哲学者・東京医科大学教授。東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。京都精華大学助教授、和光大学教授を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Book & Travel
40
「史上最強の哲学入門」が面白かったので、その中でニーチェを深掘り。感銘を受けたというより、諸刃の剣的な印象で気になっていた。本書はNHK100分de名著の解説本で、ニーチェの生涯から、ツァラトゥストラのテーマである超人や永遠回帰まで分かりやすく解説している。真髄まで理解しきれてはいないが、力強く主体的な思想で魅力ある反面、ナチスに利用されたように解釈の仕方で強者の理論になる危険があるのも分かる。著者の西研氏の考えが前面に出る感じが最初は気になったが、悦びと創造性という解釈は納得性があり理解しやすかった。2020/05/31
ヒデミン@もも
34
原典は読んでいないが、ニーチェの言葉には共感。ニシケンさんにも。このシリーズ面白そう。番組は知らなかったけれど。2014/09/22
手押し戦車
28
固定的な真理や価値とは自分自身が作り出したエゴ。自身で価値を創造して行くなかで、不要な信念を捨て新しい信念を心に入れていく事で成長していく。前を向くのはポジティブとかではなく自分の心。私達は闇があると思ってるけど実は宇宙のどこを探しても光はあるけれど闇は無い。電気も光を出し闇を生み出す存在は懐中電灯はあっても懐中闇灯など無い。闇という状態は光を受けそこなった状態のことで、光を受けた状態は明るいだから明るいの反対が闇で、光の反対はこの世に存在しない。悩みと闘ってもの幸せはない悩み=闇は光を受け損なっただけ。2015/07/27
井月 奎(いづき けい)
25
お肉を好んで食します。さばくのも自分でやります。という人がお魚をもらったような感覚と言えば伝わるでしょうか?美味しいのは知っていますが、どこに包丁を入れれば料理できるような姿になるのかが想像もできない状態で、まな板の前で立ちつくす。ニーチェの著作を前にした私の状態です。なので最初の一刀を名人にふるってもらいましょう。見事な三枚おろしにしてくれています。この後はお任せあれ。刺身にしようか、洗いも良いでしょうし、雉焼きも捨てがたい。さあ、五年間、倒けつ転びつしたニーチェからその旨味をいただきましょう。2015/09/16
おっとー
17
わかりやすくまとまったニーチェ解説本。ただし短い文量の中でも、孤独感・ひとりぼっち感の強いこれまでのニーチェ論から距離をとり、他者とつながることによる超人の実現可能性を提起するなど筆者なりの解釈も欠かさない。また、ニーチェの永遠回帰概念はその現状肯定的側面から、ともすれば意識高く解釈されがちだけど、「受け入れられないこともあるし呪っていい」と、無理な意識高さを強いないのも好印象。多様な人間に寄り添うニーチェ論。2021/10/10