出版社内容情報
中国を理解するうえで欠かすことのできない農村に深く分け入り,懐深い社会の実像に迫る真正の中国社会論.長期にわたるフィールドワークをもとに村落の営みを生き生きと描き出し,ロシアやインドとの比較を通してその特徴も浮き彫りにする.「悲惨な農村」というステレオタイプのイメージを超えた,逞しく自由な姿が明らかに.
目次
序章 草の根から中国を理解する
第1章 「譲らない」理由―農民の行動ロジックの変遷
第2章 「つながり」から「まとまり」へ―村落ガバナンスとその資源
第3章 社会主義農村の優等生―山東果村
第4章 出稼ぎと公共生活の簡略化―江西花村
第5章 人材流出と資源獲得―貴州石村
第6章 小さな資源の地域内循環―甘粛麦村
第7章 比較村落ガバナンス論
終章 草の根からの啓示
著者等紹介
田原史起[タハラフミキ]
1967年広島県生まれ。1998年一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了、博士(社会学)。現在、東京大学大学院総合文化研究科准教授。専攻:農村社会学、中国地域研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
21
なかなか図書館の蔵書に入らなかったが、アジア太平洋賞の「大賞」を受賞したからであろうか、ようやく入ってきた。著者が長年中国のいくつもの農村でフィールドワークを続けてきた成果が濃厚に詰まっている。従来の中国農村の研究では経済発展から取り残された面ばかりが強調される傾向にある。だが本書で展開される「村落のガバナンス資源の循環」という視角の分析枠組から見えてくるのは、「発展」や「民主」といった問題関心とは別の次元で中国農村社会が様々な問題解決に取り組んできた生の姿である。これは極めて貴重。2021/02/01
さとうしん
15
『中国農村の現在』の元になった論集ということで読む。こちらは特に特定の農村を対象として農村のガバナンスに焦点を当てる。自分たちの住む地域の問題について自力更生を図るというのは当たり前のことだという気もするが、インドなんかと比較するとそうではないらしい。道路建設と比べて村の廟の再建については自力更生度が上がるという指摘も面白い。基本的に選挙が存在しないことが、中国農村の個性(ユニークさと言ってしまってもいいだろう)を形作っているということが本書を通して見えてくる。2024/07/10