出版社内容情報
19世紀の地中海を舞台に国や地域を越えて活動しつつも、人びとの記憶から忘れられた一人の人物が残した言葉からつむぐグローバルヒストリー。ヨーロッパの植民地支配、キリスト教圏とイスラーム圏の相克、そして、奴隷制と人種主義といった現代世界に影を落とす近代史上の大問題をとらえかえす。
内容説明
19世紀の地中海から開かれていく新しい世界史にむけての方法と見取り図。奴隷制と人種主義、キリスト教圏とイスラーム圏の相克…境界を生きる人たちのまなざしから試みる新たな歴史叙述。
目次
序章 地中海革命の時代
第1章 奴隷制の黄昏―カイエンヌ、一八一二年
第2章 サン=シモン主義の夢―パリ、一八三二年
第3章 イスラームとの出会い―ディムヤート、一八三五年
第4章 通訳の結婚―コンスタンティーヌ、一八四〇年
第5章 輻輳するオリエンタリズム―アンボワーズ、一八五一年
第6章 アラブ王国の幻影―アルジェ、一八六五年
終章 両岸の旅人、あるいは未発のポストコロニアル
著者等紹介
工藤晶人[クドウアキヒト]
1974年東京都生まれ。2004年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。日本学術振興会特別研究員、大阪大学大学院特任研究員、学習院女子大学専任講師、同准教授を経て、学習院大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mc6ρ助
14
『近代の社会において、理念と現実とのへだたりは大きい。その最たるものが、個人のなかにある多様性にもかかわらず帰属先をひとつしか選べないという矛盾である。イスマイル・ユルバンは、その矛盾を生きた最初の世代に属していた。(p259)』国が領土と国民と主権を有するというのもそうだけど、現状でそれに対する異議申し立てがウクライナに対するロシアの侵攻であることは哀しい。当たり前と思ってしまう西洋中心の歴史観への疑義を提示してくれるこの本は心地よい。2022/11/18
Go Extreme
1
地中海革命の時代: イスマイル・ユルバンとレオン・ロシュ 一九世紀のとらえ方 「文明」論のその先へ 奴隷制の黄昏―カイエンヌ、一八一二年 サン=シモン主義の夢―パリ、一八三二年 イスラームとの出会い―ディムヤート、一八三五年 通訳の結婚―コンスタンティーヌ、一八四〇年 輻輳するオリエンタリズム―アンボワーズ、一八五一年 アラブ王国の幻影―アルジェ、一八六五年 両岸の旅人、あるいは未発のポストコロニアル: 伝えられたことば 境界者の思想 短い一九世紀の終わり2022/07/04