内容説明
「エロティシズム…太古の闇のなかの恐怖をそのまま現代に持ってきたかのような、社会生活をおびやかす暗い力」。千一夜物語やサド、ジャン・ジュネ、フロイト、同性愛、ナルシシズムと、あらゆる角度から人間のアンモラルな隠れ家を探検。
目次
絶対と超越のエロティシズム
エロス、性を超えるもの
ホモ・エロティクス―ナルシシズムと死について
苦痛と快楽―拷問について
もう一つの死刑反対論
アラジンのランプ―「千一夜物語」について
ジャン・ジュネ論
文学的ポルノグラフィー―A・P・マンディアルグの匿名作品について
黒魔術考
悪魔のエロトロギア―西欧美術史の背景
ドラキュラはなぜこわい?―恐怖についての試論
著者等紹介
澁澤龍彦[シブサワタツヒコ]
1928年、東京に生まれる。東京大学仏文科卒。マルキ・ド・サドをはじめ数多くのフランス文学を翻訳・紹介。その他中世の悪魔学(デモノロジー)、美術評論、文芸評論、独自の幻想小説など幅広いジャンルで活躍。『唐草物語』で泉鏡花賞、『高丘親王航海記』で読売文学賞を受賞。87年に死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
阿部義彦
23
改版して装いも新たになりました。エロスとタナトスについても深く考察しています、フロイト理論ばかりで切り込んでいますが、ユングにも興味がある私にはなんかモヤモヤが!でも、時代を考えればむりもないかな?拷問や黒魔術などは本当に興味深く読ませてもらいました。2017/10/11
明石
4
冒頭のエッセイ『絶対と超越のエロティシズム』に痺れた、、2023/11/28
よいおいこらしょ
2
性とオカルトと宗教をシームレスにつなぐ文章力は流石澁澤龍彦先生。ジャン・ジュネの悪について考察は、『仮面の告白』の近江と一緒だと思った。2020/04/20
文字
1
想定していたより前半が難解だった。後半はコラム的で面白い。エロスという根源的な欲についてそのあり方、語られ方、捉えられ方を歴史の総体からみることができて学ぶ点が多い。 p.66「『黎明』によれば、「創られも創りもしない神」である「無底」は「自己を見よう」とする。「無底」は鏡にたとえられ、この鏡に映して見られた自己が「心」である。すなわち、「無底の意志」は「父なる神」であり、「心」は「子なる神」である。」 ・エディプスコンプレックスの乗り越え方。女には女のエディプスコンプレックスがあるのも初耳だった。2020/03/13
坂田 哲朗
1
没後30年を機に、この夏から秋にかけて、いろんな作品が新装出版されているようです。 「想像力のはたらきによって成立する芸術活動が本来アモラル(無道徳)であるように、エロティシズムもアモラルである。また芸術に進歩がないように、エロティシズムにも進歩がない。」 この方の博識と探求には、手のつけようの無い魅力があります。でも、覚悟なく近づくと火傷してしまいそうです。 読書の秋に、火中の栗を拾うような思いです。2017/11/03