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中公文庫
アイロンと朝の詩人―回送電車〈3〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 304p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784122057081
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C1195

内容説明

『伊勢物語』からロジェ・グルニエ、小島信夫、『クマのプーさん』へ。大学受験のため上京した冬の日の思い出や、路線バスを乗り継いだ奇妙な東京近郊一人旅、はたまたタイプライターへの抜き差しならない愛情について。凝り固まった顔の皺をのばすような、言葉と人間と世界についての軽やかな思索の数々。好評「回送電車」シリーズ第3弾。

目次

ネクストバッターズサークル
二度目の揺れ
運動と停滞
梅雨時の図書館で神様を試みしてみた午後
「最も純粋な小説」をめぐって
メロンと瓜ロジェ・グルニエと山田稔
存在の「いざり」について
時間の森への切り込み
魯鈍な愛
ピストル・言葉・ミステーク〔ほか〕

著者等紹介

堀江敏幸[ホリエトシユキ]
1964年、岐阜県生まれ。作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

238
我々の認識では堀江敏幸氏といえば小説家(芥川賞作家だ)であり、フランス文学の研究者なのだが、そんな彼が大学に入学するまでは国文科志望だったというのは初めて知った。「栴檀は双葉より芳し」と言うが、さすがにここに開陳されている『伊勢物語』の読みは、物語としての妙味の核心を捉えている。フランス小説もいくつか俎上に上るが、そこでは一つ一つの言葉を疎かにしない彼の姿勢に、我々も小説の読み方の反省を強いられるのである。なお、表題は学生の誤訳から連想を膨らませていったものであり、ここにも堀江氏の魂の自由な飛翔が窺える。2015/07/24

KAZOO

52
Ⅱに引き続いての堀江さんのエッセイ集です。これもやはりわたし的には楽しくてすぐ読んでしまいました。特に本屋古本屋について書かれているところは楽しくなります。高校時代は中世文学志望であったのがフランス文学を専攻しての自分の気持ちなど。また大学受験のときに東京に出てきてのはなしなど「堀江」三四郎的な感じで、物語にできるのではないかと思いました。このエッセイ集は何度も読み返すことになりそうです。まだ文庫でⅣは出ていないのですね。2015/05/26

ぽち

14
本書で白眉なのが小島信夫との回想を綴った編に続く「ファラオの呪いが町田まで」の冒頭、頁を跨いでの続く一文、――その日の朝、徹夜をしてなお仕事を終えられなかったおぼつかない足で、私は小田急狛江営業所「境91」系統乗り場に立っていた。行き先不明の旅の出発点を、いつもお世話になっているどこかのバスの営業所にしようと決意したからである――編集の妙でもあるのだけど、こういう文面にぶつかった瞬間には立ちくらみ、眩暈に似た感覚を覚える、わたしにとって、それは剥き出しの、小説そのものに触れてしまったと思える瞬間なのだ2016/08/04

うた

9
再読。「プルーストへの感謝」ってこんな感謝のされ方をしてもプルーストは困惑するだろうに笑。一方、「キーパーの指先をかすめたい」での、読んだ本について語ることのむずかしさは共感が持てる。それが好きな本であるほど、面と向かってとくとくと語ることが難しくなる。2019/02/25

タイコウチ

8
「キーパーの指先をかすめたい」というエッセイで、堀江さんは書評をサッカーのPKにたとえて「キーパーの指に触ってからネットを揺らす」、そんなきわどい書評を書きたいという。「キーパーが一歩も動けないPKは、たしかに美しい。だが、そこには対話がない」とも。書評に限らず、本当に楽しい会話とは本来そういうものかもしれない。よく「言葉のキャッチボール」なんて比喩で会話を語ることがあるけれど、会話の妙とは、たとえ気心の知れた仲でも、常に自分たちの予想から少しずつずれていく、そんな世界の広がりを教えてくれるものだと思う。2015/09/10

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