内容説明
ベストセラー『母の遺産―新聞小説』の“母”による自伝的小説。五歳の時に預けられた、横浜にあるハイカラな家。この家の娘であったらと夢見る少女は、関西の長屋で、無教養な母と若い父のもとに育つ。やがて、芸者だった母の過去と、自分が庶子であるという事実が明らかになり…。明治から昭和を逞しく生き抜いた母娘を描く。
著者等紹介
水村節子[ミズムラセツコ]
1921年、神戸生まれ。ウイルミナ女学校(現・大阪女学院)卒業。二度目の結婚のあと渡米し、20年間ニューヨークに住む。1980年代に帰国。以後、作家八木義徳氏に師事した。『高台にある家』が唯一の著作となる。2008年死去。作家の水村美苗氏は次女(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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(´-`).。oO(ふわふわ
31
自伝小説とのこと。複雑な家庭環境で育った主人公の成長過程がたんたんと語られている。☆32017/04/16
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
20
水村美苗氏「新聞小説」で死んでいく母親が、水村節子氏。節子氏の自伝的小説。込み入った家庭環境である。父親より24歳も年上だった母親。家に出入りする訳の分からない「親戚」達は実は異父兄姉だったと、あとで知る。芸者だった母親は、妾や雇い主の息子の嫁になりつつ、これらの子供を次々と産み、離されてきたのだ。続きが読みたい。2015/10/01
YH
6
複雑過ぎる家庭環境が最初から見え隠れしており、詳細を知って母の人生の数奇さと幸の薄さ、それでも前向きに生きてる逞しさに魅入られた。母親に対した屈折した節子の気持ちもわからないこともない。同性の親には愛しさと時に疎ましさはきっと誰しもが感じるのではないか。2021/05/01
バーベナ
4
複雑な家庭環境を、少しづつ理解していく少女。我慢強く湿っぽい話かと思いきや全く違う。腹立たしいくらい、のびのびと生意気(あえて言う!)だった。2016/03/29
Junnko Simmura
4
「母の遺産」のあのお母さんの書いた小説ということで、いささか興味本意で読み始めたら止まらなくなった。昭和のはじめの中産階級と下町の生活の対比は、吉屋信子の少女小説のよう。水村美苗さんが手を加えたとしても、てらいのない客観的な文章は印象が違っていた。この小説でも「母の遺産」でも、娘というものは殊更母親に対して突き放してきつい見方をしてしまうものなのか、我が身を省みて思う。逆にこの頃母親への恨みを口にした娘が非難されるとも聞く。どちらも母と娘の関係は他人には理解されない複雑なものがあるのだろうな。2014/04/06