内容説明
かつてヨーロッパの三分の二はケルト人のものであり、農耕においても産業においても、ローマ人よりも進んでいた…。キリスト教文明に封印された古代ケルト文明。秘儀、冒険、天変地異、神々の戦い、宿命の恋など、その豊饒にして波瀾万丈の物語を蘇らせ、ヨーロッパ文明に関する固定観念を覆す書。
目次
序章 もう一つのヨーロッパ
第2章 死者の海
第3章 巨石文明人の遺産
第4章 神々の系譜
第5章 創世の神話
著者等紹介
ブレキリアン,ヤン[ブレキリアン,ヤン][Brekilien,Yann]
1920年フランス、ブルターニュのブレーン生まれ。レンヌ裁判所判事等を歴任した後、ケルト学の学位を取得。2009年没
田中仁彦[タナカヒトヒコ]
1930年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒。鹿児島大学を経て上智大学文学部教授に。2000年に退官し、現在、上智大学名誉教授
山邑久仁子[ヤマムラクニコ]
1961年神戸市生まれ。上智大学文学部仏文科卒。上智大学、桐朋音楽大学、文教大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mahiro
15
ケルト文明を賛美しギリシャローマ文明を貶める序文にげんなりして読むのをやめようかと一瞬思ったがまあ読んだ。三章の巨石文明人の遺産、あたりから面白くなり角持つ神ケルヌンノスの話や神々の系譜の解釈など面白かった。ケルト系ファンタジー好きな中級以上の人ならまあ読んでも悪くないかも。でもケルトをリスペクトする余り感情的に他文明を無知蒙昧扱いするのはどうかと思う,私もケルトに魅力を感じてやまないがケルトが野蛮でなぜ悪い?と思いつつ買ってしまったので下巻へ行きます。2018/03/30
蛇の婿
13
ケルト大好き学者さんの熱い熱いケルト神話論w実は序文でのそのあまりの熱さにちょっと引いてしまって、読み進むのにだいぶ時間をかけてしまいましたw 肝心のケルト神話群をざっくりとしか知らないので確かなことは解らないのですが、個人的には、一神教であるキリスト教「信者」の観点からアニミズム的な多神教を解釈し理解しようとするとこうなるのかなー的な文章が散見しているような気がして面白く感じましたw 八百万の神々がしろしめす日本だと縁結びの神に交通安全や安産祈るのは普通のことですしw いや日本人が適当なだけなのかなww2016/10/02
禿童子
9
日本の浦島太郎や天女の羽衣と同じコンセプトのケルト神話があることを発見。ケルト神話は、アイルランド、ウェールズ、ブルターニュ半島に今なお残るキリスト教以前の異教時代の名残である民間伝承や形を変えた儀式の中に姿をとどめている。ドルメンなどの巨石文明の遺跡の上に、原始から古代の神々が多層的に加わり、後代のガロ・ロマン期にはギリシャ・ローマの神との混淆、さらにキリスト教布教に伴う習合や変形など興味深い。2015/11/29
p.p.
9
序章において非常に痛烈なローマ帝国批判、および熱烈なケルト賛美を行っているが、その夢見がちなケルトへの憧憬を原動力としたケルト神話解釈は実に創造力豊かである。彼は常に少数の重要な原理に基づいて神話を解釈し、首尾は一貫している。それはキリスト教、ギリシア・ローマ的宗教のいずれとも異なり、ケルト民族が共通して無意識の領域に持っていたであろう世界観を著者が想像し再現したものである。ページ数の問題か、論拠とする文献は示されていない。上二つの欠点を除けば、入門書にはなりえないが、良い本である。2011/10/15
春風
6
ブルターニュ人が書いているので、島のケルトだけじゃなく大陸のケルト神話にも詳しいのがいいところ。ただ、ケルト神話自体そもそも体系的でないので仕方がないのだけれど、なかなか全体像が把握しづらい。2011/10/18