内容説明
「陰気は私のコンプレックスだった」。貧しさと飢えの中で育ち、敗戦で人間不信に陥った少年は、俳優座養成所で後の夫人と出会い、名優への道を歩み出す。黒澤明、小林正樹ら日本映画黄金時代を彩る巨匠の作品に出演、舞台俳優としても大きな足跡を刻んだ著者が、亡き妻との思い出を中心に綴った生涯の記録。
目次
第1部 遺し書き(男が独りになった時;生いたち、思い出の記;二人でひとり)
第2部 役者人生を語る(「役者」が嫌いなぼくを、支え続けてくれたもの;いつまでも「新しい仲代達矢」を表現していきたい)
著者等紹介
仲代達矢[ナカダイタツヤ]
1932年東京都生まれ。52年、俳優座演劇研究所付属俳優養成入所。舞台『幽霊』のオスワル役でデビュー。以後、舞台俳優として『どん底』『リチャード三世』『ソルネス』などで芸術選奨文部大臣賞、毎日芸術賞、紀伊国屋演劇賞ほか数々の賞を受賞。1975年から俳優を育成する『無名塾』を亡き妻・宮崎恭子(女優、脚本家、演出家)と主宰。2007年、文化功労者受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Crystal.B
1
同世代の役者では飄々とした滑稽身を感じる山崎努さんのほうが好きでしたが、読んでみると黒澤映画などの存在感からくるイメージと濃いルックスに似合わず、シャイで不器用でなんと言っても愛妻家の素顔がとても身近でほほえましく感じました。そういえば、新劇を含めてこの方の舞台を見ていません。お元気なうちに是非、無名塾の公演に行かなくては!と決意しました。2015/03/27
kazoukato
0
恭子さん、素晴らしい。2016/06/22
Satoh Takumi
0
仲代達矢氏が妻である宮崎恭子さんを亡くしてから書いたものです。映画を知りたいというよりも、仲代達矢なら“読むべき”本です。彼の役者人生を支えた人はどんな人間だったのか。ファンとしてはそれを知る必要があります。
owawamure
0
亡くなられた奥様、宮崎恭子さんへの本当の尊敬と感謝が一番心に残った。2011/10/14
はるたろうQQ
0
特異な俳優、仲代逹矢を知るために読むべき一冊。生い立ちや時代状況から、自己評価の低い男であった仲代逹矢が、俳優座養成所に行き、さらに宮崎恭子という人物に出会って回復していく。そして、無名塾を作って若い者を育てていく。隣人愛は自己愛があって初めて可能になる。俳優座養成所で初めて認められ、自分の使命を理解した。さらに自分の弱味をみせることのできる存在として妻を得る。仲代逹矢はとても幸せな人で、妻こそが彼の才能を一番高く評価し、理解者であり、彼を導く者だった。最後に載っている二つのインタビューがとても興味深い。2019/01/13