出版社内容情報
江戸開府後百年、幕府は改革を迫られる時期を迎えた。士農工商とはいえその裏には次第に勢力を伸ばしてきた町人の力が無視できぬ存在となっていた。〈解説〉杉森哲也
内容説明
江戸開府百年、行きづまってきた幕政を打開すべく、白石や吉宗の政治改革、田沼の重商主義的政策がおこなわれ、それに呼応して町人は、時代の実力者として新しい地位を確立した。一方では、新しい思想や科学が誕生し、近代の黎明がおとずれようとしている…。
目次
御蔭参り
六代将軍家宣
新井白石
白石の外交
絵島疑獄
文昭院殿の御遺命
享保の改革
吉宗の反対派
大岡越前守忠相
天災と飢饉
諸藩の経済と商業資本
揺れる天下
田沼登場
町人道徳と文化
世界に開く眼
近代精神の萌芽
著者等紹介
奈良本辰也[ナラモトタツヤ]
1913年(大正2)、山口県に生まれる。松山高校在学中、軍事教練拒否事件で放校になるところを歴史学の教授に助けられ、歴史への開眼が始まる。38年、京都帝国大学文学部国史学科卒業後、京都市史編纂所に入り研究生活をつづけ、戦後は服部之総の門下にあって維新史研究の新分野を開拓した。48年より69年まで立命館大学教授を務める。71年、編纂責任を務めた『社会科学大事典』(全二十巻)により十六回毎日出版文化賞を受賞。2001年、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
61
奈良本先生の得意分野ではないかと思われます。江戸時代の中盤以降を町人の生活や地位およびその実力などの観点から描かれています。主な登場人物は新井白石、徳川吉宗、大岡越前守、田沼意次など時代劇の主人公たちが闊歩している様子がうまく書かれています。楽しめました。2015/09/16
珈琲好き
7
白石吉宗意次。江戸中期からは徴税システムや財政問題などがメインとなり、抱えている課題はもう現代国家とほとんど変わらんな。2016/06/30
穀雨
5
通史の一巻としては斬新な題名とカバーにひかれて読んでみた。6代将軍家宣からいわゆる田沼時代までの政治・経済・社会・文化を手広くカバーしているが、歴史学者というよりエッセイストのような軽快な筆致で、面白かった。特に、冒頭のお蔭参りや町火消の描写は情景が目に浮かぶようで、とても楽しかった。このシリーズは半世紀以上前の刊行ということで今まで敬遠していたが、気になる巻からまた読んでいきたい。2020/05/21
takeshi3017
4
中央公論の歴史本第17巻。時代は江戸開府後100年たった頃。5代綱吉から10代家治までの政治・商業・文化を辿っていく。綱吉は前巻参照。家宣は綱吉の生類憐みの令を綱吉の死と同時に廃止した…家宣は家光や吉宗の様に有名ではないが、隠れた名君であったと筆者はいう。次の家継は病弱ですぐに死去。享年8歳。この頃新井白石、間部詮房が主導する正徳の治があった。8代吉宗はTVドラマでも有名だが、享保の改革を行った。詳細→ https://takeshi3017.chu.jp/file9/naiyou33101.html2023/05/25
あしお
3
徳川家宣から家治までの巻。著者も戦国や幕末に比べて注目されない時代である事を認めているが、やはりそこに近代への萌芽が間違いなくある。江戸時代から明治時代へと言っても、家康の時代からいきなり明治になったわけではなく、いわゆる市民階級の成長が綿々と底流にあり、それに対する促進と反動が幕政の基調だったのだろう。私の地元の隣町は田沼意次所縁の地ということで「わいろ最中」というお土産品がある。小判を形どった最中なのだが、300年経ってなおイジられる意次がちょっと気の毒だw。2020/10/09