中公文庫<br> 遅れた時計

中公文庫
遅れた時計

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  • サイズ 文庫判/ページ数 278p/高さ 15X11cm
  • 商品コード 9784122016767
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C1193

内容説明

ひたむきに生きてはいても、なぜか少しずつ、人生の軌道からはずれてしまう人たちがいる。水道局に勤務し、漏水探知の仕事をしている孤独な青年の愛と失意をとらえた「水の音」、幸せな結婚をしたのに、昔のクセからキャバレー勤めを知られ、離婚される女をユーモラスに描く「遅れた時計」、スリをやめることができない自分に絶望して死を選ぶ少年をみつめる「予備校生」など、人生の小宇宙を創り出す秀作10篇。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

フユコ

80
突然ここで終わるの?とびっくりする短編が多かったけど、説明されない分他の作家さんの短編を読んだ時より読み終わったあとその話について考える事が多く、こういう楽しみ方もあるのかと新鮮でした。解説も良かったです。2017/01/28

shizuka

70
登場人物は奇抜でもなく、至って一般的な人なのだが、どうしてか落とし穴に嵌るように転げおちていく。不倫の果て自殺した兄嫁を引き取りに行く義弟や、職歴を偽り結婚し、ふとしたしぐさでそれがばれ離婚されてしまう女や、夫に逃げられ自立のため万引きなど未然に防ぐ保安官になるも、夫が新しい女と万引きする場面に遭遇するなど、ごくごく善良で普通な人が出合う思いがけない不幸の描き方が鋭く、薄ら寒くなってしまう。そしてどんな話も詳細な説明はないので、想像力は逞しくなる一方。吉村さんのドライな視点は私にいつも刺激を与えてくれる。2018/01/09

あつひめ

64
時代背景のせいなのか、読んでいると懐かしくまたどこかホッとする。物語は明るいものではないのに、せわしなくないからなのか。登場する人たちが真剣に生きている…生きさせられている?吉村さんの筆次第でこの人たちのこれからが変わるんだな…と一つずつ終わるたびにざわざわドキドキした。こんな気持ちになったのは久しぶりだな。2018/12/21

タツ フカガワ

56
深夜、道路に聴診器のような集音器を当て、地中1・2ⅿに埋められた配水管内を流れる水の音から漏水の有無を聞き分けるのが仕事の若者は、ある日隣室に引っ越してきたシングルマザーの部屋の水漏れを聞き取る。水道局の知られざる仕事と若者のほのかな恋心を絡めた「水の音」という一編で、これをはじめ全10編のうち8編が、男と女の情愛を細やかに描いた珠玉の短編集。どれも素晴らしいが、なかでも表題作や、主人公が吉村さんと重なる「オルゴールの音」が印象深かった。2023/10/01

mondo

48
3年ほど前、金吾さんの感想を読み、読みたいリストに入れていたはずが、今になってしまった。確かにどの作品も切れ味が良くとても面白かった。場面毎の会話(台詞)も生きている。そしてラストはいつも余韻を残して終わり、そのあとは、読み手に託される。いずれも昭和50年代頃の短編集だが吉村昭にとっても絶好調の時期だったのではと思わせる。特に「遅れた時計」は印象的。 吉村昭は小説の本来の姿は現実の可能性の上に創造を行うものだと語ってきた。この短編10篇も異なる生活背景をモチーフに生きる人間を見事に描いている。珠玉の一冊。2023/05/19

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