内容説明
米ソ冷戦下の1958年、宇宙開発の総合的推進機関として設立されたNASA(米国航空宇宙局)。強力な研究開発センターをいくつも擁し、宇宙への“最前線組織”として、アポロ、スペースシャトル、国際宇宙ステーション、惑星探査などの計画を進めた。だが予算削減、事故、国際情勢の変化により、その目的は変更を余儀なくされていく。本書は、時代の波に翻弄されながらも宇宙開発に挑んできた巨大技術組織の軌跡を描く。
目次
序章 巨大技術組織の横顔―NASAの鳥瞰図
第1章 NASAの誕生―米国の新たな挑戦
第2章 アポロ計画―超大国の意志と創造力の結晶
第3章 スペースシャトル―成熟期NASAの基幹システム
第4章 国際宇宙ステーション―変容する国際政治の象徴
第5章 無人探査と宇宙科学―人類の知識領域の拡大
終章 時代のなかのNASA―現代科学技術の潮流
著者等紹介
佐藤靖[サトウヤスシ]
1972(昭和47)年、新潟県生まれ。94年、東京大学工学部航空宇宙工学科卒業。同年科学技術庁入庁、2000年、退職。05年、ペンシルヴェニア大学大学院科学史・科学社会学科博士課程修了、Ph.D.同年、日本学術振興会特別研究員(東京大学)。08年、政策研究大学院大学助教授を経て、10年より科学技術振興機構研究開発戦略センターフェロー。専攻・科学技術史、科学技術政策(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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陽@宇宙望遠鏡⭐︎星と宇宙
27
スミソニアン航空宇宙博物館とケネディ宇宙センターへの道中〜帰国後に読了。宇宙センターの名称変更も歴史がある。ISS計画が最初は難航してたというのに驚き。ISSはアポロの月着陸の時の大統領演説と共に平和の象徴のイメージが強い。1972年のアポロ計画終了からは宇宙科学の比重が増え普遍的価値を持ち国民の支持も大きい。日本人の私だってNASAのアプリやサイトで宇宙のこと学ぶの楽しいから本当に宇宙の研究は人類の宝物。ジェイムズウェッブ氏はアポロ計画の時の長官の名前。宇宙望遠鏡の名前の由来!アポロ計画とアルテミス計画2023/12/09
ヨクト
26
かつて人類が宇宙を夢見た時代、NASAは国の最重要機関のひとつであり、費用も多く割かれ、政界への影響も大きかった。時は流れ現代、宇宙はもうセンセーショナルな話題ではなくなってしまったと共に、NASAの立場も難しくなっている。有人探査の意義やコストの問題など、NASAの機関としての変容が求められる。そんなかつての栄光から現代までの衰退、そしてこれからについて言及。2015/05/17
那由田 忠
17
日本では、アメリカの宇宙開発と大陸間弾道ミサイルなどの軍事開発とを結びつける人が少ない気がする。北朝鮮と同じように、二つは密接に結びついて発展してきた。いま現在はどの程度の関係なのかはよくわからないが、徐々に関連性が弱まって予算確保などで大変だったということかな。いまNASAのサイトに行くと、いかに現在の生活に役立っているかを宣伝している。確かに温暖化による異常気象との闘いには、宇宙開発による衛星からの情報が不可欠なんだよね。2019/06/18
T2y@
16
組織としてのNASAの歴史。各宇宙センターの雇用とか、政治・支援団体と持ちつ持たれつの関係性と進む官僚化。大統領は国家発動のシンボルとして利用し、そこをしたたかに開発成果へ繋げる人材と仕組み。ここがNASAの強みなんだなと。 一方で冷戦時代の様に国家主導での推進が難しい今は、民間委託でオープンに、分業で開発を進める事が時代に即しているとも思う。イーロンマスクの『スペースX』が次期開発に参画しているのも納得。2014/10/09
キーツ(Nob Arakawa)
13
SF門前小僧の端くれとしてNASAは一種憧れを含めて幻想を抱いていた時期もあったのだ。がしかし最近の存在の薄さの理由を調べてみようとは何故か思わなかったのは幻滅してしまう事を恐れてもいたんだろうなと今は思う。そんな中で本書はややこなれていない短所はあるがNASAの変遷を横断的に見るには良書と言っていい。NASAは確かに冷戦時代が咲かせた徒花なのかもしれないが、むしろ巨大な国費が動く公的機関にしてみれば驚くほど科学の理想を掲げてこれたものだと感心するほどである。今後のNASAの復活に強く期待したい。2015/09/16