内容説明
古代の日本人は、自然をどのように感じ取っていたのだろうか。本書は『古事記』に記された神々や神話と自然との関係を、海・植物・天地・身体など、具体的なテーマに分けて解説する。山や太陽を神とみる心は、今も生きている。いっぽうで、カラスを神の使いと見なし、桃を魔除けとして用いる信仰からは、現代人の心は遠く離れてしまった。この国の自然観の源流をたどり、『古事記』の言霊を体得しよう。
目次
第1章 天と地、そして、高天の原
第2章 ムスヒとアマテラス
第3章 海―神々の原郷
第4章 山―神と精気
第5章 植物―王権と精霊
第6章 鳥―天と地を結ぶ
第7章 身体―内なる自然
終章 言霊としての『古事記』
著者等紹介
千田稔[センダミノル]
1942年(昭和17年)、奈良県に生まれる。京都大学文学部史学科卒業。同大学大学院文学研究科(地理学専攻)博士課程を経て、追手門学院大学講師、助教授、奈良女子大学教授、国際日本文化研究センター教授等を経て、奈良県立図書情報館長、帝塚山大学特別客員教授、博士(文学)。専攻は歴史地理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
39
古事記の内容を天地や海、山そして鳥等に分けて、其々の内容を検証している。例えば現在の目から見ると鳥が飛ぶのは羽ばたきや滑空という面からしか見れないが、古代人には飛ぶのは天と地を結ぶためであった。かようにここでは古代人の価値観というものを、考察しようとしている。個人的にはヤマトタケルの白鳥になって飛び去るエピソードが大好きなので、「鳥」に関する考察とその後についての「身体」が印象に残った。最初は成立について語っている部分が多いため、古事記の政治的側面についての本かと思ったのだが、これは嬉しい誤算であった。2013/04/11
たびねこ
7
現代人はものを見ているようで何も見ていない、感じているようでこの世界から何も感じとってはいないのではないか。「一目見れば暗唱し、一度耳にすれば記憶する能力を持っていた」という稗田阿礼の手になる古事記の世界にあらためて引き寄せられる。2015/10/10
読書実践家
6
宇宙生成について、その疑問に答える書物が残っていることに感謝したい。日本人の思考法を知り、日本人が読みついできたものがあって、2600年の歴史に思いを巡らせることができる。2016/03/28
Yoshihiro Yamamoto
2
A 古事記を「海」「山」「植物」「鳥」「身体」という切り口から古事記を読み解くという斬新な視点。背景には「自然界のすべてに神霊が宿り、人間も自然界に属しているというアミニズム的認識こそが、「環境」論をかんがえるとき、「共生」よりも、強い倫理性を発信できることが「古事記」によって示唆されているという著者の考えがあり、私も共感したところだ。前半の古事記が道教の影響を受けている点、なぜ同じ時期に古事記と日本書紀が編纂されたかの見解は目から鱗。カラスは神意を伝達する霊鳥出会ったことなど古事記をめぐる雑学も豊富。2013/08/04
nori
2
古事記を海、山、植物、鳥、身体について分析している。厳島神社のカラスに団子を食べさせる行事を観たことがあるが、カラスは古事記の中に出てくる鳥であり、古事記は自然界と深くかかわってきたことがわかる。2013/07/04
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