内容説明
江戸には江戸の文化を成熟させた先人がいた。その果実は、現代と全く異なる味わいがあるからこそおもしろい。著者は、江戸の文物を部品に一人乗りのタイム・マシーンを組立てて江戸観光を企てる。着いた時代は伝統の「雅」と新興の「俗」の両文化が見事に融和した壮年期の江戸。中央はもとより地方にも足を延ばし、一癖も二癖もある多彩な人々を訪れ、出版事情を探り、文人大名の蔵書も拝見。まずはこれを評判記に刻んで御報告の仕儀。
目次
一人乗りのタイム・マシーン
1 江戸的文化
2 江戸の中央と地方
3 廓の素顔
4 箸休め
5 伝記屋開店
6 和本礼賛
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あんどうれおん
6
格調高い論考や公式の記録とは一線を画す領域に埋もれた事象にひたすら目を向けた記事の数々。江戸時代の文化について、後世にあたる現代の価値観を無理に当てはめて理解するのではなく、すでに終わった時代を当世のものとして生きた人々のありようをそのままに眺めたいという考え方は素敵だと思います。初版が1992年10月の本書自体が注釈を要する古典になりつつある事と、ところどころ描写が生々しい事との二点により、どなたにもオススメできる内容ではないかもしれませんが、それでも、軽妙で楽しい本でした、と言い切りたい一冊です。2022/04/29
kawasaki
4
初版1992年、新聞各紙に発表のコラムを集めたエッセイ集。森和也『神道・儒教・仏教』で江戸文化の「雅と俗」の二重構造について言及される中で著者の名が挙げられていたことから手に取る。「雅俗融和」を実現した江戸時代中期の文化を中心として、江戸文化のありさまが興味深く軽妙に説かれる。現代感覚の延長線上に見がちな「江戸文化」への距離の取り方、視点の置き方は傾聴すべきであろうし、古書籍やそれに携わる人々の世界が愛情深く伝わる。「金ツマ」や「F・F雑誌」といった発表当時の流行りの方に注釈が必要そう。2019/10/15
ELW
1
まさか、町触に「奥書に作者と版元を記載せよ。」とあることから版権と著作権が確立されたとの解釈は受け止められなかった。讃岐の柴野栗山、伊予の尾藤ニ洲、肥前の古賀精里の三博士が皆さんが地方出身者か。そして、定信が京伝に仕事を依頼してるとは。まさか、Verenigde Oost-Indische Compagnieが『江戸生艶気蒲焼』の挿絵に見られなんて。江戸の瑣末な事情をたくさん紹介していただいて感謝。2021/07/18
勉誠出版営業部
1
中野三敏さんの『江戸文化評判記』を読了。文字どおり江戸の文化を、軽妙な語り口で紹介した一冊。もちろん和本についても書かれていて、以前トークイベントでも披露していた和本に付く虫退治のくだりも。2013/02/08
Yamanaka Shinya
1
江戸文化の入門書。江戸人の考えに即して、江戸の物事を見ていく視点は、難しいだろうけど、なかなか面白い。2012/05/01