出版社内容情報
夫のER入院、新しい犬、原始人ダイエット、夢にみた専業詩人の生活……『閉経記』から五年、老いゆくあたしの「今」をつづる。
伊藤比呂美[イトウヒロミ]
著・文・その他
内容説明
さんざん悩み書くことで生き抜いてきた詩人の眼前に今、広がる光景は。
目次
何も残さず死んでみたい
野ざらしを心に今日も枯野ゆき
凍りつく肩に膝、腰も頭も
いつもポケットにうんこ袋
やり直すったって
あれからぼくたちは
年取ったお婆さんがものすごく年取ったお爺さんを
野沢那智だった
夫、マジでやばい
夫、さらにやばい、そして熊本も〔ほか〕
著者等紹介
伊藤比呂美[イトウヒロミ]
1955年、東京都生まれ。詩人。78年に現代詩手帖賞を受賞してデビュー。80年代の女性詩人ブームをリードし、『良いおっぱい 悪いおっぱい』にはじまる一連のシリーズで「育児エッセイ」という分野を開拓。「女の生」に寄り添い、独自の文学に昇華する創作姿勢が共感を呼び、人生相談の回答者としても長年の支持を得ている。近年は介護や老い、死を見つめた『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』(萩原朔太郎賞、紫式部文学賞受賞)を刊行、米国・カリフォルニアと熊本を往復しながら活動を続けてきた。2018年より拠点を熊本に移し、早稲田大学教授を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
152
『閉経記』を読んだ時は「これだ!」と感じ入った私。なのにどうした?今回は非常に疲れて読了に何日も費やした。外向性の高い伊藤さんだもの飲み込まれないようにとでも感じたか?私。それでも伊藤さんの数年をわが身にダブらせたりして・・「人が死ぬのはしかたがない。でも名残惜しくてたまらない。」は身体全部で共感して『トメの結婚』では泣けてしまったのだった。2021/11/28
ちゃちゃ
124
私より少し人生の先を歩く詩人の伊藤さん。歯に衣着せぬ痛快な物言いで、老いや夫亡き後の寂しさを語る。その筆致は赤裸々…というより、誠実。自分自身の生き方にも、そして自分の文章の読者にも。だからこそ彼女の日常が胸に迫る。波乱に満ちた人生で60歳を迎えた彼女を待ち受けていたものは、年の離れた夫の介護と自らの老い。そして永の旅立ち。伴侶を亡くした著者の圧倒的な孤独感が、私の心まで強く揺さぶる。それでも、生きる基本は「わたしはわたし」。孤独を抱えながらも最期まで自分らしくありたい。その潔さにエールをもらった。2019/01/24
ででんでん
103
「良いおっぱい悪いおっぱい」「おなかほっぺおしり」「子どもより親が大事」「伊藤ふきげん製作所」…昔から比呂美さんのエッセイを、貪るように読んできた。今回の作品は特にこちらの気持ちに響き、爆笑するところも多く(「なくす探す」や「内向的な人々」は、特におすすめ)、出会えて本当に良かった1冊。昔の比呂美さんよりも、今の比呂美さんのほうが、共感できる部分がより大きいと思える。現在日本におられるとはいえ、全く境遇も人生のスケールも違うのだが。「トメの結婚」での、サラ子ちゃんについての記述を読むと、涙が止まらず。2018/10/15
美登利
98
比呂美さんの本を読了すると疲労感が残る。いや達成感なのかもしれないけれど、少し先ゆく先輩女性の代表みたいな人である。体験は全て当てはまらなくとも同じような経験をしていると、彼女と自分の境目が無くなるような感じがしてしまう。両親を見送り、親とほぼ同年代の夫も看取った比呂美さん。現在は日本に期限付きで戻り大学教授をされているようなので、今度は若者たちとの交流を通しての本が出されるかなと楽しみにしている。寂聴さんとの本が気になったので読んでみよう。2019/02/05
どんぐり
92
女性から開放されたことを『閉経記』で「ズンバズンバ」と書き表していた比呂美さんが、還暦を過ぎて「たそがれてゆく子」と自嘲する。母親を亡くし、父親と愛犬の死、そして今度はものすごく年取ったアメリカ人の夫を看取ることになる。エッセイの大半は、比呂美さんの「数年前から夫の体力が衰えた。口論が減り、口論しても、追いつめてこなくなった。あたしに頼るようになり、全身の重みをかけて、あたしに取りすがるように、最後の数か月を生きて、死んで、いなくなった」日々の述懐である。そこには石牟礼道子さんの死もあるのだろう、ヒタ2018/11/07