出版社内容情報
終戦の玉音放送を聞いた人々に、たしかに一つの共通の心情が湧き起こった。歴史の彼方に忘れられたその一瞬をさぐる精神史の試み。
内容説明
昭和二十年八月十五日、終戦の玉音放送を聞いた人々の胸に、ある共通の心情が湧き起こった。歴史の彼方に忘れ去られたその一瞬をさぐる、精神史の試み。
目次
第１章 折口信夫「神やぶれたまふ」
第２章 橋川文三「『戦争体験』論の意味」
第３章 桶谷秀昭『昭和精神史』
第４章 太宰治「トカトントン」
第５章 伊東静雄の日記
第６章 磯田光一『戦後史の空間』
第７章 吉本隆明『高村／光太郎』
第８章 三島由紀夫『英霊の聲』
第９章 「イサク奉献」（旧約聖書『創世記』）
第１０章 昭和天皇御製「身はいかならむとも」
著者等紹介
長谷川三千子［ハセガワミチコ］
昭和２１年（１９４６）東京都生まれ。東京大学文学部哲学科卒業、同大学院博士課程中退。東京大学文学部助手などを経て、埼玉大学教授。平成２３年退官、同大学名誉教授。著書に『バベルの謎―ヤハウィストの冒険』（和辻哲郎文化賞）などがある（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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めっかち
6
凄い本！ 昭和二十年八月十五日正午、日本人の精神に何が起きたのか──本書は、この途方もない、一見して捉え所のない問に挑んでいる。長谷川氏は哲学者だから決して読みやすくはないが、実に濃厚な内容。本書を読み思ったのは、昭和天皇の「人間宣言」を批判した三島由紀夫や小室直樹がもしこれを読んだら何と言うだろう、ということ。然し「神とは何か」という所から含めて、日本人は余りに神学というものを知らなさすぎるよな…。本書は実に濃密な内容だが、一言で言うなら…「我らの神断じて敗れず」。本書をちゃんと読めばこの凄さが解る！2022/11/13
ゆうぼう
5
あの日人々はどういう想いで『あのしーんとした静けさの中で』聴いたのかが書かれていたように思う。70年も経つというのに、どうしてそこから立ち直れないのか？まだ、わたしには難しい部分も多く、しばらくしてからもう1回読み直したいところです。ただ、日本人としてこの国の在り方はよく考えないといけない。このままでいい訳がない。2015/08/09
ひでき
5
異様な興奮と感激を持って本書を読了した。なぜ本書がこれまで書かれなかったのか？いまだから書かれ得たのか？戦中世代は分かっていても言葉にならなかったのか？日本国民は本気で本土決戦という死を覚悟していたことを？昭和２０年８月１５日正午の「生きよ」との詔とは、その覚悟の裏切りであったことを？この答えを求めて一気に本書を読んだ。 2014/03/10
MrO
4
最後の２章、つまりイサク奉献と昭和天皇御製は、すばらしい。なぜ、いままで書かれなかったのかの不思議もあるが、なぜ、この本が発禁にもならず、ほとんど無視されたような状態で、簡単に手に取ることができるのかも不思議。実な、不思議な国、日本である。日本の長い歴史を考えた時、天皇というのが、つねにあのような姿をしていたとは言えないのは、当たり前で、これからどのような姿をとってくるのかもわからないが、近代日本をあのような形で作り上げてきた、一つのスタートとして、昭和２０年８月１５日があることは間違いないだろう。2014/12/26
クリフトン
4
昭和20年8月15日 日本人の心に起きていたのはどのようなものだったのか 様々な評論や小説などから探っていく非常に真摯な本 著者の国を想う気持ちがよく表れている でも敢えて言えばここで述べられているのは強い宗教的な世界でカルトやそこからの覚醒と紙一重かも判らない また全ての日本人がその一瞬の静寂をそのように感じ取ったのではなく寧ろ多くの人々は全く別の感覚で受け取ったのかも知れない 幕末から敗戦までの日本は長い歴史からみて特殊な状態だったという気もする しかしこれから日本を考える時必読の一冊ではないかと思う2014/03/15
