内容説明
父は満州国皇帝・溥儀の実弟、母は日本の候爵家令嬢。敗戦後、わずか5歳で動乱の大陸をさすらい、命からがら引き揚げてくるも―歴史的一族に生を享け、激動の日中間を生きた女性の半生を描く。
目次
第1章 幻影(満州国瓦解―一九四五年;父と母の物語―一九三一~三九年 ほか)
第2章 流転の子(旅の始まり―一九四五~四六年;通化大虐殺―一九四六年二月三日 ほか)
第3章 再会(父は何処に―一九四七~五七年;天城の悲劇―一九五六~五七年 ほか)
第4章 母、妻、そして娘として(動乱―一九六四~六七年;祝婚歌―一九六七~七二年 ほか)
第5章 命さえあれば(地の底が揺れた―一九九四~二〇〇五年;祈る者―二〇〇五~〇七年 ほか)
著者等紹介
本岡典子[モトオカノリコ]
ルポルタージュ作家。1956年生まれ、関西学院大学卒業。現代家族・夫婦の危機と再生などを主なテーマとし、『魂萌え!の女たち―祝祭の季節を生きる』(岩波書店)ほか著書多数。近年は中国を精力的に取材し、歴史ドキュメンタリーを手がけている。元ニュースキャスター(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
16
歴史に、そして日本に翻弄された人生のなか、直向きに家族と生きる。その姿勢に敬服。入手可能な証言、資料に基づき日中の史実もまとめられている。先の大戦を異なる視点で見ることができると共に、”家族”について考えさせられる。溥傑の複雑な心境も興味深い。「溥儀の後継を天皇が決める!?」という関東軍の暴挙を少なからず喜ぶ溥傑。時代背景が影響したとはいえ複雑。2012/02/24
山猫
14
愛新覚羅家最後の皇女の1人であり、ラストエンペラーの姪に当たる福永嫮生さんからの聞書。母は言わずと知れた流転の王妃・浩さん、非業の死を遂げた姉が慧生さん。 が、慧生さんは現代でいうストーカーに殺されたのだと思う。あまりに高貴で、優しく、慈愛に溢れていたがために、彼女は大久保の危険な感情に気づかず、自分の力で救うことができると信じていたに違いない。よもや、道連れにされるなど、夢にも思っていなかったろう。それを心中などとは、とんでもない話である。2022/08/07
丘野詩果
7
『流転の王妃』は読んだことがあり、愛新覚羅浩さんの自伝であるが、これはその娘嫮生さんのこと。2011年刊であり、本岡氏は、3年の取材とそれよりずっと以前からの想いにより書きあげた。これほど綿密で、多くの人にインタビューしたものは他にないのではないか。嫮生さん提供の写真がどれも興味深い。映画『ラストエンペラー』はかなり前に観たけれど、また観たくなった。家族愛、夫婦愛の深さに感動した。2015/06/21
うみ
4
この手のドキュメンタリーには、筆者の思い入れが強すぎる感傷的なものや、虚実のわからないものも多いので、それほど期待しないで読み始めたが、当事者の言はもちろん、史的背景きちんと調べた手堅い本だった。筆者が溥傑父娘に傾倒しているので、ほめすぎかと思える点もなくはないが、それを納得させるだけの裏づけをしている。政略結婚という形に乗りながら愛を貫いた父母、日本で一私人として生きる道を選びながら、自分にできる形で父母の遺志を継ごうとした娘、それを助けた上は周恩来から下は日中両国のふつうの人々。感動的な歴史ドラマだ。2011/12/05
犬養三千代
3
命は一つ。命からがら逃げ惑う日々。戦争に翻弄された幼き頃。 静かに行くものは健やかに行く。健やかに行くものは遠くまで行く。この言葉の重みを噛みしめたいけど2015/05/26