出版社内容情報
死刑囚の男に起こる不条理悲喜劇と、初邦訳の知られざる戯曲2篇を収録。笑いと風刺。ナボコフの意外な魅力に満ちたシリーズ第2弾。笑いと風刺、ナボコフの知られざる魅力に満ちたコレクション第二弾。「認識論的卑劣さ」という意味不明の罪状によって死刑判決を受けた男が、看守や同獄囚らに振り回されながら救いの日を待つ――。アンチ・ユートピア的不条理を描いた表題作と、初邦訳となるナボコフの戯曲を2篇収録。これらは1930年代に実際に上演されて好評を博した。言葉の魔術師の虚構性と演劇性が加速する第二弾。
ウラジーミル・ナボコフ[ウラジーミル ナボコフ]
著・文・その他
小西 昌隆[コニシ マサタカ]
翻訳
毛利 公美[モウリ クミ]
翻訳
沼野 充義[ヌマノ ミツヨシ]
翻訳
内容説明
笑いと風刺と、知られざる名作戯曲。1930年代、パリへ。「言葉の魔術師」の虚構性と演劇性はさらに加速する。アンチ・ユートピア的不条理小説、初邦訳となるコミカルな戯曲2篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
132
『処刑への誘い』カフカの「審判」と状況設定は似ているが、貫くのはクンデラの「冗談」にみられるもの。ボルシェビキ体制から逃れて15年後で、ナチ体制歓迎が最高潮だった時期にベルリンでロシア語で書かれた(英語用の序文での本人筆) 。冗談ではおそらくすまないであろう時代の風潮をこう書いたかと感服。何度も読みたい。戯曲『事件』ドキドキさせてふっとそらす。うまいな。ナボコフは戯曲もいい…と思ったら、2つ目の戯曲『ワルツの発明』は、スピリットはわかるが、チェーホフならこういうのをもっと簡潔にピリッと書くだろうと思った。2018/04/30
erierif
18
『処刑への誘い』ナボコフ による不条理、メタ小説。カフカ的である日、なんの心当たりもなく死刑囚となり投獄される。主人公以外の人物はみな奇妙でかけらも好感をもてず…正直、読んでて辛い。ナボコフを好きでもなかなか読み進まず苦しかったが主人公の書いた一言に、胸を打たれた。分かりにくくはぐらかすように描かれたのは政治が絡んでいたからだろうか。ラストまで異色であった。戯曲『事件』ドタバタ的なお話。戯曲『ワルツの発明』冒頭から大臣と部下のやりとりが気持ち悪く権力者への不快感を見事に表現されている。(続2018/07/31
masabi
10
【概要】ナボコフ・コレクションとして、「処刑への誘い」「事件」「ワルツの発明」を収録する。【感想】いずれもナボコフがロシア語で創作していた時代の作品で、目当ては「処刑への誘い」だったがどの作品もおもしろかった。認識論的卑劣さの咎で死刑宣告を受けた男の顛末、危うい夫婦関係に止めを刺した復讐に怯える夫、新兵器を通じて描かれる権力者への皮肉。2023/03/14
井蛙
4
『処刑への誘い』。あたかも死を宣告された瞬間から、彼は余人とは別の言語をしゃべり始めたようだ(これは別の言語をしゃべっているから死刑に処されるということと、おそらく同義である)。それゆえ死刑囚である彼に提供される最上級のユマニスム的待遇は、ユマニスムのパロディに堕してしまう。そればかりでなく、彼がついに死刑囚に特有のあの思弁の中で、不可避の運命としての死を見出すとき、世界は自らが書割りに過ぎないことを暴露し、脆くも崩壊してゆくのである。ちなみにこの作品は『審判』とは一から十まで全然違う(主人公の名前だけ→2020/02/06
緑虫
2
処刑への誘い ★★★ 地球上のどこかの国で「認識論的卑劣さ」というよくわからない罪で死刑になる人の話。ナボコフが後に語ったことによると西暦3000年のロシアが舞台らしい。カフカ『審判』が思い出されるわけだが、ナボコフは特に参照していなかったとのこと。最後メタフィクションっぽくなる。物語の舞台が固定的で演劇的な印象。戯曲2篇と抱き合わされているのもうなずける。 事件(戯曲) ★★☆ 刑務所に服役してた人が復讐に来るのにおびえる話。フリースタイルラップ調で話すジプシーのおばあさんが出てくる。2018/04/05