内容説明
田原藩士として武士の本分を堅守しつつ、西洋文明の正確な理解に努め、瞠目すべき写実を独創した、徳川後期屈指の画家。不遇な幼少期から非業の自刃に至るまで、明治維新という一大革命の前夜、その文化状況の危機を象徴するかのような崋山の生涯。宿命の男の肖像を、等身大に活写する。
目次
不忠不孝渡邉登
鎖国日本と蘭学
天皇、将軍よりも藩主
写実の独創
藩政改革の日々に
人間崋山
蛮学事始
井蛙管見を排す
海からの脅威
牢獄への道
海防と幕政批判
田原蟄居
崋山自刃
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
73
なんと13年ぶりの再読だった。生き方も絵も素晴らしい。あたら実務的な能力が秀でていたばかりに藩の要職に。国を憂え海防を唱える。世に先んじての憂国の志だったが、生前は影響は与えなかったようだ。中心愛国のゆえに海防をと警世したが、本人は画に生きたかった。画への探求心は、同時代では類を見ない存在だと自負。牢の中でも絵筆を執る。画商が絵をせっせと売って回る。謹慎の身ではあってはならないこと。それが命取りとなった。絵が命。絵が命取り。いつか、崋山の絵を観に故地へ行きたいものだ。2020/12/30
James Hayashi
33
幕末の歴史に昇ってくる名前ながら深い事を知らず読み始めたが少なからず感動した。彼の一生と、彼の残した素晴らしい絵画を解説を通して見通せる良書。崋山の夢は天下第一の画家になる事。陰影法を用い深みのある肖像。国宝に指定されている絵画では最も近代でなかろうか?藩士でありながら弱体藩(田原)ゆえ喰うにも困り絵を売っていたという。また冤罪的な蛮社の獄により囚われ、自死へと向かう姿は不幸と言えよう。巻頭の口絵を見ながらの読書になるためか文庫本は出ていない。この読書により非常に豊かな時間を感じた。お勧め。2017/10/22
奏市
15
教科書で目にしてからずっと気になっていた華山。キーン先生が伝記を書かれていたと知り、買わずにいられず中古を購入。伝記で落涙したのは初めてだろうか。まずは画家、鷹見泉石像は徳川末期では唯一の国宝とのこと。肖像画の傑物。佐藤一斎像は気に入り、アバター使用中。純粋な儒学者でありながら、蘭学をメインとする西洋知識の価値を認め、学んだ先駆者。欧米列強の海洋からの侵略に早くから危機感を抱き、対応を幕府に求めていた見識者。けれども藩主に忠実に尽くし、藩主の身を守る為、自決。こういう人こそ日本人らしい見習うべき人かと。2019/11/27
しんすけ
8
崋山の『鷹見泉石像』を初めて観たのは60年位前だったろうか。陰影をこれほど明確に描く画家が江戸時代に居たことに衝撃を憶えたものだ。10歳前後での幕末理解は不完全であり、江戸時代の絵画とは浮世絵に代表されるものに過ぎなかったからだろう。後に、崋山が『慎機論』を書き高野長英や松本斗機蔵との親交があったと知るものの、朱子学の立場を崩さなかったことには違和感さえ覚えた。忠孝を徳とする祖父たちへの反発もあったのだろうが。2017/01/29
Jiemon
5
所謂"蛮社の獄"って蘭学嫌いの目付・鳥居耀蔵がでっち上げた冤罪なんですね。崋山や高野長英にとっては気の毒な事件だったと思います。自分に危害が及ぶことも恐れず、崋山を支援した松崎慊堂や椿椿山には頭が下がる。それにしてもこの本 訳本っていうのが信じられない。2011/08/20




