出版社内容情報
フィツジェラルド[フイツシエラルト]
著・文・その他
内容説明
抜群の感受性で時代の寵児となり、真摯に人生の理想を追った人フィツジェラルド。「人生は崩壊の過程である」となぜ彼は書くことになるのか。ニューヨークの上流家庭に生まれた青年アンスンを憧れと揶揄をもって描いた「金持の御曹子」、大恐慌後、パリに静かな悔恨と不屈の魂で佇むチャーリーに熱い思いを託した「バビロン再訪」等、彼自身と当時のアメリカを彷彿とさせて魅力的な6編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みも
192
独自に編まれた6篇の短編集。小説には読むべき年代が2通りある。脳が柔軟で多感な若年期、そして、人生を穏当に過ごす壮年期。本書は間違いなく後者であろう。人生経験抜きに、この感慨は得られない。全体的に『グレート・ギャッツビー』の色調を帯び、浪費・放蕩・不倫・没落…人生の浮沈と懐古が鮮やかに表出される。新国家アメリカが抱える憂鬱と、ヨーロッパの歴史への羨望や劣等感も垣間見える。個人的には『泳ぐ人たち』が完成度が高いと思う。また『氷の宮殿』は女性主人公という点で異彩を放ち、北部と南部の気質の違いを端的に描く秀作。2020/07/16
レアル
94
以前『グレート・ギャツビー』を読んだが、それの基になった作品。「人生とは崩壊の過程である」と彼は言う。著者自身の生涯そのものであり、また彼の作品の中にも見られる。そして当時を生きた人たちの暮らしぶり、考え方がよく小説として表現されていたと思う。読んでて面白かった!というより、良い作品が多く、著者の切なさに心沁みた。2013/07/07
えりか
53
華やかさというものは、とても儚い。上流階級の繁栄と衰退、そして孤独がしみじみと柔らかい文章で綴られて、なんとも寂しい気持ちになる。めまぐるしく価値観が変わっていく時代に、一人取り残され気づいたら孤独であった彼らの中で、お金はもはや価値基準の上位をしめさない。彼らは全てを手に入れてきたのかもしれないが、愛だけは手に入れることができなかった。それが、悲しい。「冬の夢」「金持ちの御曹司」が好き。2017/02/03
優希
49
時代の寵児と言われたフィッツジェラルドの短編集。流麗な文章で描かれた世界はバブルのアメリカを彷彿とさせるようでした。2024/03/24
拓也 ◆mOrYeBoQbw
40
短篇集。ロストジェネレーション。ヘミングウェイ、サリンジャー、フォークナーと同時代を飾った大作家ですが、本作のそれは彼らの前の世代、アンダスン、ジョイス、コンラッド、そしてヘンリー・ジェイムズらの影響がはっきりと表れ、尚且つずっと明瞭簡潔な文章で描かれています。更にジェイムズが欧州と米国で描いたものを米国南北にしたりと同じテーマでもミニマルに描く点。フィッツジェラルドらしい古典や引用も交えつつ、会話と描写のバランス、修辞も必要にして最低限に抑え、十分にフィッツジェラルドの真骨頂を味わえるかと(・ω・)ノシ2019/03/20