出版社内容情報
凄惨な拷問殺人事件の捜査と第二次世界大戦に関する極秘調査。二つの任務に奔走するヴァーラ警部に、上層部の圧力と暗い過去がのしかかる。極寒の地・フィンランドの警察小説第2弾!(解説/堂場瞬一)
内容説明
フィンランドはユダヤ人虐殺に加担したか―歴史の極秘調査ともみ消しの指令を受けたカリ・ヴァーラ警部。ヘルシンキで起きたロシア人富豪妻の拷問死事件の捜査においても警察上層部から圧力がかかる。さらにカリを襲うのは原因不明の頭痛。妻のケイトは彼を心配するが、臨月を迎えた妻をこれ以上不安にさせることはできない…。激痛に耐えながら挑んだその結末とは?好評極寒ミステリ第2弾!
著者等紹介
トンプソン,ジェイムズ[トンプソン,ジェイムズ] [Thompson,James]
アメリカ生まれ。現在はフィンランド人の妻とともにヘルシンキに住む。バーテンダー、クラブのガードマン、建設作業員、兵士など、さまざまな職業を経験した後、作家に転向。2009年に発表した前作『極夜カーモス』でエドガー賞やアンソニー賞などの新人賞にノミネートされ、注目を浴びる。ヘルシンキ大学でフィンランド語を学び、また英語文献学の修士号を取得。英語、フィンランド語を流暢に操る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
135
今回カリ・ヴァーラが扱う事件は2件。1つは夜勤明け直前に出くわした不倫中カップルの女性の拷問殺人事件。もう1つはフィンランドの公安警察ヴァルポの生き残りでフィンランドの英雄であるアルヴィド・ラファティネンが第二次大戦時にユダヤ人の虐殺に関わっていたとの容疑でドイツが引き渡しを求めているのを阻止すること。フィンランドの歴史の暗部が本書では大いに関わってくる。近代史の暗部にはドイツのナチスが関係しているが、フィンランドもまた同様だとは思わなかった。そして結末は過激さを更に増しそうな不穏な空気をまとっていた。2021/02/15
紅はこべ
98
これを最初に読んだので、1作目の犯人結末を知ってしまった。まあいいや、1作目を手に取る頃にはすっかり忘れているだろう。日本は欧米とまとめていうが、ヨーロッパとアメリカでは深い隔たりがある。双方を理解できるカリとケイトのコウモリ的苦悩。メアリは一番嫌いなタイプのアメリカ的保守主義者と思ったが…フィンランドって意外と喫煙者に寛容なのね。フィンランドに戦争犯罪者はいないと叫ぶ人物に、現在日本のネトウヨを連想。それでもフィンランドではカリの世代以降が、苦い真実に向き合おうとしている。(続)2019/09/16
ケイ
96
最近の北欧ミステリへの興味と、読メで目にすることが多く、二作目からになるが読んでみた。一気に読める。次から次に起こる大小の事件に、暴かれるフィンランドの黒い歴史が、ともに気持ちを惹き付けて離さない。今回初めて、フィンランドという小国が、スウェーデンから離れ、ロシアとドイツのどちらを取るかを迫られていたのだと言うことを知った。パックス・アメリカーナの押し付け、偽善的なアメリカの善意は、筆者がアメリカ人だからこそここまで書ける。肝心のミステリの部分でも、始末の付け方が良かった。2014/12/11
巨峰
86
フィンランドのカリ警部シリーズ第2作。森と湖の国フィンランド素敵とか思ってたイメージがぶっ壊されること必至です。女性虐殺事件と第二次世界大戦中のナチスの協力者でもあった国家的英雄を捜査することになったカリ警部を中心に描く。とにかく出てくる多彩な人々がほっと全員どっか壊れている。前作で反感をもった警部の妻ケイトがまだまともに思えるくらい。でもどこか人間的な感じを受けるんだよな。事件の解決まで、驚きが続き、ページをめくる手が止められなかった。前作とは比較にならないほどの快作だと思います。2019/03/22
ナミのママ
83
〈カリ・ヴァーラ警部シリーズ〉2作目。首都ヘルシンキに異動になり殺人捜査課の警部となったカリ。ストーリーは前作からつながっている。今回の事件はフィンランドの歴史が絡んだもの、倒錯した性犯罪。それより面白かったのは破滅的性格な部下ミロの出現、アメリカから来た義弟に話すフィンランドの風習。極めつけは家族顔合わせ食卓でフィンランド対アメリカの女性が自分の国をけなされたことに対して怒りをあらわにして口論となった場面。国民性?お国柄?オタオタするカリの姿がなんともいえず。カリの所属が大きく変わりそうな次作も楽しみ。2024/02/22