内容説明
レーザーディスクのように輝く絹織物―。偶然、不思議な糸を吐く野蚕を発見した長谷康貴は、その魅力に憑かれ、バイオ・テクノロジー技術者・有田芳乃の協力で、蚕を繁殖させようとする。事業は成功したように見えたが、意外なパニックがまき起こる…。ミステリータッチの本格SF。第3回小説すばる新人賞受賞作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
421
事実上のデビュー作。第3回小説すばる新人賞(1990年度)受賞作。パンデミックなバイオ・ホラーとでもいうべき小説。後の(1995年)『夏の災厄』との近接性は多い。しかも、彼女はこの路線から多くの小説を開花させていった。その意味でも記念すべき作品。解説では「新鋭作家」と言っていたが、その後の彼女の活躍からはもはや昔日の感。自然の摂理を人為的に操作しようとすることによって生じる破綻と、その結果としての恐怖を見事に描いて見せた。ホラーと切ない恋、そして女性として生きること―これらが篠田節子の本質的なテーマだ。2018/12/09
Take@磨穿鉄靴
88
篠田氏の本を読むのは二作目。これも面白い。小学生の頃教室で蚕を飼っていたのを思い出した。楽しかったな。蚕の飼育。ストーリーも展開も楽しかった。ゾクゾクとする描写が多数。これは虫嫌いの人が読んだら尚ゾクゾクするんだろうなあ。★★★★☆2019/03/06
みも
75
美しきタイトル…予備知識なしで本を開くなら、そこにどれほど美しい物語が閉じ込められているのか…そう思うに違いない。そんな読者を打ちのめすように、毒々しく、グロテスクで、吐き気をもよおす様な描写が全体を覆いつくす。美しい絹布という静かな導入から、やがて不穏な気配が増幅してゆく様は筆力の成せる技。また、確証バイアスのような凶事の端緒を敢えて否定する場面が幾度も出てきて人間の本質を抉り、僕は幾度も自分に問いかけた。この僅かなページ数にこれだけのものを凝縮する手腕は流石だ。以後の「夏の災厄」の布石とも言えそうだ。2023/09/17
milk tea
73
バイオテクノロジーの使い方を間違うと取り返しのつかないことになる恐ろしさを感じた。体長15cmの肉食蚕が逃げ出し異常発生する。家畜、アレルギーのある人間をも死に至らしめる。死んだ人の シャツが蠢いてる。なぜだ?もう、いや〜!想像の域を越してる。あ〜、ダメだ。ブルっと震えること何度も。2018/05/19
takaC
72
結局毒蚕を根絶できたのかわからないし、長谷康貴はそのことから目をそらしてしまったみたいだし、埼玉県某市の日本脳炎パニックより怖いな。でもなぜか八王子外へはあまり拡散していかないみたいだから安心なのかな。体長15cmはともかく、幼虫の容姿が上手くイメージできなかったぞ。家蚕をそのまま拡大した感じなのか?でもそもそも山繭蛾の幼虫は白くないと思うが。あ、新発見種ってことなのか。2015/05/14