内容説明
1978年春、大学のキャンパス。僕は、意志的で抗いがたい魅力を湛えた、佐伯元子と出会った。そして、平穏な人生から引き剥がされてしまった。僕の心を深く突き刺し、おそろしい冒険に巻き込み、姿を消した元子。10年後、社会的には成功した僕にとって、元子との再会の予感が、生きる原動力となっていた…。人生の全てを決めたひとりの異性との出会いを、圧倒的なスピード感とパワーで描く、渾身の長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
85
辻仁成という作者は、破滅的なもの・突き進む情念のようなものを描かせると本当にうまい、と今でも思う。野性的な少女・佐伯元子との出会いから、情熱がほとばしるような行動まで、一気に楽しませてくれる。本の中での 存在感もあって、夢中になって読み終えた。 2010/05/19
みも
56
人は大なり小なり人から影響を受ける。たとえそれがバッド・インフルエンスだとしても。鋭敏で強烈な個性は凡庸な感覚を麻痺させ、理性を破壊しささやかな抵抗力を根こそぎ奪う。あたかも四方から伸びる蔦が手足を絡め捕り、泥の底無し沼に引きずり込まれるように。豊富な語彙、的確な形容、斬新な比喩、濃密な心象。作品のそこかしこから迸る才気。堅実な生き方を唾棄すべきものと断罪し、今までの価値観を根底から覆しかねない魔性の力がそこにはある。そして、凝縮されているのは紛れもない純文学のエキス。淫靡で鮮烈な印象を引き摺り下巻へ…。2018/09/21
桜もち 太郎
19
とても25年前に書かれたものとは思えない程の臨場感。1978年、大学生だった僕と元子の物語。大学で出会った二人は親友でもあり同志でもあり、心のどこかで愛し合っていた。元子は生ぬるい大学の生活に嫌気をさし退学する。その元子の人生の渦にのまれていく僕。二十歳前後の若さは人生の中において特別だ。その特別なときに二人を襲う不幸。元子は姿を消し、僕は映画監督として成功をすることになる。10年後二人は再会する。二人の不幸の原因となったものに対する復讐心に接する僕。スピード感がありのめり込む。さっそく下巻に突入しょう。2025/09/20
chie
19
退廃的な世の中に抗う様に生きる女性、佐伯元子に出会い魅了されていく主人公が、彼女の人生に巻き込まれていくという物語。波乱万丈でドラマチックな人生は、それを魂レベルで望んだ人に与えられるものなのかもな~と思う。逆に言えば、自分の魂が何を望んでいるかは、自分の人生が教えてくれる。佐伯元子には、私も憧れてしまうけれど、実際生きていくには、平凡であることがいかに楽かと思ってしまう。とは言え、下巻も読まずにはいられない。2022/02/20
よしみん
15
まるで運命に導かれるように元子と出会ってしまった僕は、彼女と引換えに自分の人生全てを入れ替えられてしまう。常識を覆す思想が包む日常の中で、事件は起こる。自分と180°違う価値観を前に人は何を思うんだろう。それはある意味で人生を変え、行く道を広げ、人と違う何かを得ることだ。でも知らなければ、穏やかで幸せな日々がそこにはあったはず。登場人物の誰にも共感はできないが、僕と元子の行く末を静かに見つめたい。下巻に続く。2012/08/06




