内容説明
話題の映画監督・ドキュメンタリー作家の森達也が、誰もが知っている古今東西の十五の物語を、痛快にパロディー化!「桃太郎」を始めとする日本の民話、ギリシャ神話、イソップ、グリム、アンデルセン、さらにはセルバンテス、オスカー・ワイルド、芥川龍之介、浜田廣介といった作家たちの名作に触発された著者の筆は、急速にムラ化しつつある現代社会に、男と女の深遠に、ふてぶてしく、無遠慮に切り込み、その特質と異常性そして切なさを浮き彫りにしていく。毒気たっぷりの風刺精神とユーモアセンスにあふれる、独創的な現代日本論。
目次
王様は裸だと言った子供はその後どうなったか(仮)
桃太郎
仮面ライダー ピラザウルスの復讐
赤ずきんちゃん
ミダス王
瓜子姫
コウモリ
美女と野獣
蜘蛛の糸
みにくいあひるのこ
ふるやのもり
幸福の王子
ねこのすず
ドン・キホーテ
泣いた赤鬼
著者等紹介
森達也[モリタツヤ]
1956年生まれ。映画監督・ドキュメンタリー作家。98年、オウム真理教の荒木浩を主人公とする映画『A』を公開。2001年、続編『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
212
正義と悪の構図の逆転、何が正義で何が悪かはその時の状況次第。その瞬間を切り取る手法次第でどちらにもなってしまう。人間の疑心暗鬼が生み出す攻撃性について。『裸の王様』『桃太郎』『美女と野獣』『ねことすず』・・・様々な名作を切り口に人間のうわべの偽りを暴く本。単なる悪乗りではないところがいい。2020/03/16
chimako
81
その後どうなったのか……それを著す本はない……ので、著者の想像(妄想?)で描かれるその後。桃太郎や瓜子姫、蜘蛛の糸のカンダタ、泣いた赤鬼の日本昔ばなし。 赤ずきん、ミダス王、みにくいあひるのこやドン・キホーテ、果は仮面ライダーに至るまで。「青春と読書」に連載されたものをまとめた一冊。全編理屈っぽいホラ話である。が、本編作者の生涯や時代背景も探りながら人の意識の危うさや戦争に向かう狂気がそこかしこに現れる。面白くなかった訳ではないが疲れた。「知りたかったのはそれじゃないんだけどなぁ」と独りごちた読後。2019/02/15
KEI
52
古今東西の良く知られた物語15話の著者の風刺が効いたパロディ。桃太郎は平和な鬼ヶ島の侵略者となる。猫のトムに鈴を付けようとしたネズミのジェリーは国家機密漏洩罪で逮捕され、話し合った他のネズミたちは共謀罪になるとは!メディアや現代社会の矛盾を突いた話の展開には政治色が濃かったが、なるほどと思わされる事も多かった。ちょっとした違和感にも敏感になる事も大切なのだろう。挿絵(特に裸の王様)は秀逸。2020/03/07
えみ
51
物語に対する独特の視点と解釈が面白い。もし物語のセリフに注釈が付けられていたら、もし、その世界の中に入って主人公側でしか見ることの許されなかった立場を解放して他の登場人物や背景、ひとりひとりの表情などを覗き見ることができたのならば…もしかしたらもっと過酷で過激で残酷な救いようのない世界なのかもしれないし、スーパーヒーローだと信じて疑わなかった善人も阿呆でおっちょこちょいのどうしようもない奴かもしれない。なんて考えるとますます面白い。めでたしめでたしの後、どうなった?誰も正解は知らない。だから想像が生きる!2024/11/28
よこしま
34
桃太郎をパロディーした芥川龍之介までを、パロディーにしてしまうジャーナリスト森達也。◆タイトルがあまりにも意味深なので中身を確認せず借りてしまいました。お伽話だけでなく仮面ライダーまでも。ふとガッチャマンで観たシーンを思い出しました。敵組織ギャラクターの一員が給与安くて、逃げながら1号と喋ってるくだりは、自作ながら下部の立場も考えた作品だと。◆正義とは?オウムを追った彼は仏壇を盗む記者を見る。幾らでも正義は作られるような。◆総論的に一つだけの視点だけでなく、見方や考え様により多角的な視点が必要なんですね。2015/04/11