内容説明
『赤の神紋』のオーギュスト役を賭け、十日限りの舞台『メデュウサ』の幕が開いた。榛原憂月が創造した「完璧なハミル」を体現するワタル。観客を巻き込み、悪意さえ感じさせる常識を超えたケイの演技。葛川蛍と来宮ワタル、Wキャストに観客の降す審問は!?一方、舞台に呑み込まれてゆくケイを守ろうとする響生は、榛原の胸に刻印された十字架の秘密に向き合うことになり…。
著者等紹介
桑原水菜[クワバラミズナ]
千葉県生まれ。中央大学文学部史学科卒業。1989年下期コバルト読者大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
8
「メデュウサ」という人の理性が還元された狂気の世界に呑みこまれることで観客をも巻き込んだケイの演技とワタルの葛藤。邪念が無くなるようなワタルのハミルに対してケイのハミルは遅行性の劇薬のカクテルを呑まされ、一気に体を駆け巡るような気分です。エドワード役の高松塚との攻防は気まぐれに慈しむのに子供の存在を否定する「父」という概念から逃れようとすることは呪縛されるという忌々しさを痛烈に思い出しました。人は神にはなれないのに境地に立ったケイが怖かったです。そして表を見ると役がハミルを演じるための骨子となっています。2012/07/07
たろさ
3
舞台「メデユウサ」ケイ×ワタル対決。ケイが演じれば演じるほど、自分さえも喰われていくような感覚。この話はいったいどこに向かっていくのか。榛原の過去が徐々にわかってきて、連城もケイと榛原に引き回されている感じがする。藤崎が出てくると、ほっとする…と思っていたら、生み出してしまったのが一番ヤバイものだったかもしれない。2018/11/10
ロェント
2
再読。2016/03/20
momo
1
不穏な影を予感させながら、ついに幕を開けてしまった二人の『メデュウサ』。底無し沼のように人々を否応なく混沌の渦へと引き摺り込むケイのハミルと、聖なる泉のように人々を自然とひれ伏させるワタルのハミル。開幕した舞台は誰にも止められないまま勢いを加速させていく。そんな中、榛原がこれまでほとんど誰にも晒さなかった過去や胸のうちを連城に見せ始め、そうかここまで踏み込んできたか…と不思議に感慨深くなった。いよ牙を剥くケイの中の魔物とは。藤崎を電車に飛び込ませたあのころの榛原とは。残る最終章、刮目して見守りたい。2014/02/20
末森咲夜
1
藤井さんの「表紙撮影風景」が楽しかったです。本編が濃いだけにホッとします。【0図書館蔵書】2009/07/29