出版社内容情報
木田 元[キダ ゲン]
著・文・その他
内容説明
「存在とはなにか」という問いはプラトン/アリストテレス以降の西洋哲学の根本問題であった。中世スコラからデカルト~カント~ヘーゲルに通底する「作られてあり現前する」という伝統的存在概念は、ニーチェ、ハイデガーにより、その出自・継承の相を見直されることになる。著者自身の研究の軌跡に沿って、西洋に特徴的な形而上学の流れを概観する。
目次
哲学のどこが難しいか
暗い時代に―ドストエフスキーとの出会い
『存在と時間』を読みたい一心で
カント、ヘーゲル、フッサールを読む
ハイデガーに即して
哲学の根本問題“存在とはなにか”
存在了解・超越・世界内存在
存在と時間
存在論の歴史の解体
哲学のはじまり〔ほか〕
著者等紹介
木田元[キダゲン]
1928年生まれ。哲学者。東北大学文学部哲学科卒業。中央大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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WATA
57
著者がどうやって哲学思想に喰らいつき、自分なりに消化してきたかを説明することで、哲学の入りにくさを少しでも解決しようとする、意欲的な入門書。序盤の著者の哲学遍歴の話も、中盤のハイデガー哲学を入り口として「存在とはなにか」という哲学の根本命題を探っていく話も、終盤の形而上学的思考様式の歴史を見つめなおしていく話も面白い。ただし、中盤以降の内容は難しい。三度読みなおしても、わかったような、分からないような感覚。他の哲学本を何冊か読んでから、またこの本に戻ってきたい。2014/05/21
ゲオルギオ・ハーン
23
哲学に興味をもったけどどう学んでいけば分からないという要望に応えた木田先生流哲学案内本。序盤の著者の哲学を研究するまでの自伝も面白く、闇市の商人になりかかっていて、ハイデッガーの『存在と時間』を読むために学校に入り直し、東北大学時代にドイツ語、ギリシャ語まで読めるまでになり原書を読み込んだそうだ。哲学は西洋の思想なので原書を読まないと分からないという理屈とはいえ「スゴい」と声に出てしまった。自伝以降はハイデッガーを中心とした近代哲学史的に解説していくがそれを読むと哲学が西洋独特の思想というのがよく分かる。2021/07/14
fishdeleuze
20
ハイデガーにこだわって勉強・研究を続けてきた著者のその軌跡とハイデガーをいわば定点として書かれた個性的な哲学入門。プラトン/アリストテレス以来二千年以上の長きにわたり西洋哲学の根本問題であった「存在とはなにか」という問い、それはすなわち「作られてあり現前する」という伝統的存在概念であり、ニーチェ、ハイデガーによりその出自・継承が見直され「存在=生成」という《転回》をハイデガーに則した視点から論ぜられる点がユニーク。ハイデガー=木田という定点が明確で思想・思考の流れがわかりやすくとても興味深い論考だった。2015/01/17
蛸
17
前半部では著者が哲学にのめり込むようになった過程が自伝風に記される。続いてそのきっかけとなった、著者の専門であるハイデガーの哲学についての説明があり、後半部ではそのハイデガーに至るまでの西洋哲学における存在論の歴史を振り返るという構成になっている本。つまりこれ一冊で、本質存在と事実存在の対立というプラトン以来生じた西洋哲学史に連綿と連なる問題を整理できるようになっている。同著者の『反哲学史』などと重なる記述が多いが、著者自身に引きつけた文章が多いのでこちらの方が親しみやすくて初学者向けかも。2020/04/17
風に吹かれて
17
<哲学>という学問の世界で生きるようになった経緯とハイデガー<哲学>の読みを中心にしながら哲学史の概略が語られる。デカルトの言う<理性>の意味やニーチェによる<存在>概念の転換=<神の死>➡<生の意志への回帰>やハイデガーを経てメルロ・ポンティ<反哲学>へ、という流れを知ることができた。<存在>という概念は、おそらく一層複雑な思索の流れがあるのだろうと思うけれど、あまり風呂敷を広げず様々に思索する人たちの思考の太い幹を語っているから私でも読み進めることができたのだと思う。しばらく木田先生についていきたい。2019/05/23