内容説明
「老小説家・小島信夫」に縁のある三つの土地、各務原、名古屋、国立で語り始められる連作小説集。記憶障害をもつ妻「アイコさん」との生活を中心に紡がれてゆく日常と回想。淡々とした中に上質なペーソスとユーモアに包まれる傑作作品群。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
いのふみ
5
一人称で始まったと思ったら、「小島信夫」「老作家コジマ・ノブオ」などと三人称になったり、それに合わせて視点も揺れ動き、さまざまな時間軸を行ったり来たりし、時制までも混在する。であっても、だからこそ、と言うべきか、「小説」になっている。2019/09/29
午後
4
小島信夫の郷土である岐阜で行われた講演録と言った体裁で始められる本作であるが、同郷の画家二人、坪内節太郎と読んだばかりだが忘れてしまったもう一人、について講演をしてくれと頼まれたので喋ります、というところから始まって話がどんどん脇に逸れていき関心の的のようなものがあちこちに散らかっていくのはいつも通りだが、講演の模様を描くうちに浮かんだ小説家の新たな実感を付け足す、その小説家の近況を突然語り始める、いつのまにか講演の内容に戻っている、というような重層的というのかなんなのか独特の語りは読んでいて滅法面白い。2019/08/06
Tonex
4
講演録のようなエッセイのような小説のような何か。語り手の奥さんは認知症のようだが、この語り手もかなりぼけている。同じ話が何度も出てきたり、突然話題が変わったり、妙に具体的なところがあるかと思えば、全体的に漠然としていたり。ボケ老人が最近あった出来事や頭の中にしまいこまれた思い出や空想を延々書きつづけているという感じ。作者が何らかの境地に達していることはわかるが、それが何なのかはよくわからない。誰でも書けそうにみえるがこれは小島信夫だけが書くことを許された特殊な文章。良い子は真似してはいけない。2015/04/11
もろろろ
4
どうしようもない所まで着ている。老いはやはりやってくる。アイコさんは記憶を持つことが困難になっているし、ノブオさん自身も目がよく見えない。それでも彼はどうしようもないと言う人に対して抵抗し続ける。テイコウ、と言ったって普通に、自然に、素直に生き続けるだけである。恥をさらすこともあるかもしれない。だとしても、この生活の中でさまざまな人、さまざまな記憶が’今’立ち上がってくることに触れ合いながら生きていくということはどんな時でも楽しくて喜ばしいことだし、そういう重層的な感動は年を取れば取るほど増していく。2010/12/27
アレカヤシ
3
「各務原」では、「美濃」と同じエピソードがいくつも語られていて、訳もわからずうれしくなってしまう。「別れる理由」の京子さんがこんなふうになるとは(この本ではアイコさん)。人生の哀しさが。「国立」の24章などなんともいえない。 「美濃」の解説に作者の小説の依存性、中毒性ということが書かれていたような気がする。自分はいつの間にか、小島作品に中毒しかかっているみたい。よくわからないけど次々読みたくなる。読みながら陶然としている。いったん、小島小説を読むのをやめましょうね。2020/02/19




