内容説明
ゴスペルソング、ブルーズ、ヒップホップ…。アメリカ黒人につながる文化は、なぜ私たちを惹きつけるのか。そのルーツへさかのぼり、彼らの伝えた歌や物語を読み解いてみよう。そこはbadがgoodを意味し、小さな者が大きな者をやっつける世界。困難を笑い飛ばし、常に楽しみをつくり出してきた、その魅力的な世界へようこそ。
目次
1章 黒人文化の背景
2章 動物民話
3章 ジャックの物語―ワルこそヒーロー
4章 トウモロコシの皮むき歌―自由になりたい
5章 ハンマーソング
6章 黒人霊歌とゴスペルソング
7章 ブルーズ―ゆううつといかに距離をおくか
著者等紹介
ウェルズ恵子[ウェルズケイコ]
詩、歌、物語(=声の文学)の研究者。立命館大学文学部教授。「声」や「音」と関係が深い文学と、文学が成り立つ環境としての文化についても広く研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かふ
20
良書。黒人音楽の流れを黒人の歴史的な背景と共に教えてくれる。「ブルーズ」は何をやっても駄目な自分を歌った。「ゴスペル」が悪魔の歌で「黒人霊歌」は神の歌なのは、神にも見捨てられた者がすがってしまうのが悪魔だから。ドラッグやアルコールとかそういうことだよね。南北戦争で黒人解放された後に黒人が道路建設とか鉄道建設に携わったので、それが「ロック」のロールする始まりだとか。「ハンマー・ソング」と呼ばれる重労働のリズムを取る歌。それは牢獄への歌に歌い継がれる。2018/03/24
クラムボン
18
アメリカの黒人音楽である、ゴスペルソング、ブルーズなどは、土臭くあくが強すぎて若い頃には聴けなかった。しかしそれもいつの間にか、独特なリズムとビートに高揚し、シャウトな歌声に心を揺さぶられるように…。そしてこの本では、歌詞の意味を教えてくれる。そしてそれは歴史的な背景を知ることにもつながる。黒人文化のルーツの一端を垣間見たようだ。最近のヒップホップにも、触れて欲しかったな! 未だに馴染めないので…。2021/08/09
skunk_c
11
同年代のアメリカ音楽研究者の書。歴史的背景を丁寧に説明しながら、アメリカ黒人の奴隷時代から面々と続いてきた「歌」の歴史をジュニア向けにわかりやすく解説している。特にワークソングやゴスペルの解説は訳詞も踏まえて理解しやすく、入門には適当か。またブルースを「ペルソナ」と捉えるのは新鮮。しかしいかんせんブルースについては踏み込みも聞き込みもいささか不十分。そもそも"Blues"が発音上「ブルーズ」だからってそれを使うのは聴いてない証拠(黒人が歌うと多くの場合ブルースとしか聞こえない)。三井徹氏に寄りかかりすぎ。2016/07/30
yuri
9
ブルース、ゴスペルなど黒人音楽のルーツをわかりやすく解説した本。厳しい奴隷労働を生き抜くために、黒人たちの中ではずる賢かったり、怠けたりの”bad”な行動こそが”good”になったそうだが、黒人の動物民話にもその価値観が如実に反映されているという指摘は初めて聞いたので面白かった。参考文献も大充実でめちゃめちゃ有益。もっといろんなブラックミュージックを聞いてみたくなった。2018/07/20
seichan
8
アメリカ黒人のたどってきた過酷な歴史とともに、ゴスペルやブルースについてのバックボーンを説明。"bad"という単語が(悪いこと=奴隷主に対する反抗なので)"good"という意味になるという屈折、宗教的なコール・アンド・レスポンスに通じるハンマーソング(労働歌)、ロックアンドロールという言葉は鉄道や道路の敷設でつるはしをふるう動作から来ている(振りかぶる=ロック・振り下ろす=ロール、肩甲骨の動きね)、など興味深い示唆があった。というか、いまはyoutubeでほとんどの曲を拾えるのがありがたい。 2018/07/28