内容説明
二一世紀の情報革命が進めた、生産・通商のネットワーク化・モジュール化は、アジア諸国の経済力と政治力を地域全体として押し上げる。ドル中心主義、中国脅威論、TPPなど共通のリスクを抱える日本が、アジアとの相互依存と連携をとる重要性は高まっている。日本がとるべき方向を、歴史の視点と資料に基づく分析とで鮮明に提示する。
目次
第1章 衰退する帝国、興隆するアジア
第2章 情報革命がつくるアジア力
第3章 TPPから人間安全保障共同体へ
第4章 中国という存在
第5章 相互補完するアジア
第6章 欧州危機から見えるもの
第7章 日本の生きる道―いま何をなすべきか
著者等紹介
進藤榮一[シンドウエイイチ]
1939年北海道生まれ。1968年京都大学大学院修了。法学博士。1975年筑波大学助教授。1990年同大学教授。ハーバード大学、プリンストン大学等の研究員、早稲田大学アジア研究機構客員教授等を歴任。現在、筑波大学名誉教授。国際アジア共同体学会会長、東アジア共同体評議会副議長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
8
聖域なきTPP参加反対を言っていた安倍首相だが、転じて、今年3月参加表明した(21-22頁)。消費増税と相まって、どんな酷い目に遭うのか、不安は募る。図表2-1世紀変遷と産業構造変容(37頁)。21世紀は情報革命。覇権秩序はパクス・アシアーナ。アメリカのヘゲモニーは弱体化するのだろうか。田中宇氏の論稿も参考にしたいものだ。下からの、草の根からのグローバル化も反システム運動(I.ウォーラーステインの流儀)として出てくるか(38頁)。「知識共同体」というのは初めて知った。エピステモロジカルの形容詞(43頁)。2013/10/04
makio37
6
アメフトと相撲の喩えが、謀略・重武装の米国外交と単純・無防備な日本外交の特徴を悲しい程的確に表していると思う。また、我々が中国の軍事力を過大評価する一方で、その強かな多元主義外交を過小評価しているとの指摘も参考になった。そして何より「一つのアジア」への著者の熱意を感じる。難航中のようだが、著者一押しのRCEPはTPPより遥かに国益に適うに違いない。加えて、現政権は「不戦の世紀」へ歩を進めるどころか中国脅威論を煽り戦争準備を進める為体。希望に満ちた読後感と現実との落差が大き過ぎる。2015/07/01
おしげ
4
読了2013/12/06
一郎二郎
3
この本を読み喜びに満たされている。まず中国が覇権主義の軍事大国だというのは嘘で、多国間平和発展主義の国だ。また東アジアの統合の動きは想像を遥かに超えて進んでいる。アヘン戦争以前には世界全体のGDPの6割をアジアが占めていた。今日東アジアは本来の経済力を取り戻しつつある。さらにアジア通貨危機以来、金大中氏等の活動が発端となり、アジアではグローバリズムに対するセフティネットが作られ現在も発展中だ。EUは尊敬の大先輩。しかしアジア的多元主義も世界の指針となり得る。TPP等日本を米国に譲り渡す行為にはNO!2023/01/18
乱読家 護る会支持!
1
日本のこれからの生き方として、日中韓を軸においたアジア経済共同体を目指すべきと著者はおっしゃる。農業大国ニッポンのウソ、中国軍事脅威論のウソ、策略的なアメリカTPPの脅威、竹島/尖閣が日本の領土である根拠は弱いなど、、、うーん、そんな気がしてきた。「国と国とを同盟させるのではない。人と人とを結びつけるのである」。EU統合の父、ジャン・モネの冒頭の言葉が心地良い。2013/11/12