出版社内容情報
沖縄のこころとは何か.それは,第二次世界大戦での,住民の犠牲の重さを抜きにしては語れない.沖縄は人口の三分の一を失ったが,考えればこの大きな犠牲は,沖縄近代百年のあゆみの帰結であったと言えよう.著者は身をもって体験した凄惨な沖縄戦の実相を掘り起し,平和を求める沖縄の原点を語る.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
翔亀
44
【沖縄59】のち沖縄県知事(1990-)になる著者による1972年の作品。この年は沖縄返還の年だ。日本返還にあたっては、基地がなくならないことが判明し、それまで返還を望んていた沖縄の人は大きな失望をした、ということが、沖縄現代史でよく語られる。そうした中で、「反戦平和」「自治確立」という<沖縄のこころ>と、そこから必然的に導かれる「基地撤去」を訴えた書だ。この本が、いまだ版を重ねているのは、何よりも、自らが沖縄師範学校の本科二年生の鉄血勤皇隊として体験した生々しい沖縄戦の描写と、琉球大学の教授として↓2022/01/19
壱萬弐仟縁
37
沖縄文化はやさしさの文化(6頁)。米軍:沖縄占拠で海軍の前進基地を置ける上、空軍基地の確保も容易。東京、阪神の工業地帯を潰滅せうる(39頁)という戦略。食糧の大半を県外からの移入に頼っていた沖縄。戦局の急迫は、食糧難に(50頁)。生活苦がつもり、民衆の士気低下。神がかり的な精神主義が登場(51頁~)。沖縄県振興15か年計画も本当の狙いは、国策的戦費増収(60頁~)。米軍は、特攻機をバカと名づけていた(88頁)。本当のバカは戦争を始めたり、巻き込まれたりして、無為に人が亡くなることである。2015/08/15
ぽんくまそ
9
バイクツーリング中に沖縄戦を描いた地元出版の劇画本を買いテントの中で一気読みしたことがある。まさに鉄の暴風で読み終わって頭がぼーっとした。大田昌秀元沖縄県知事が自ら少年時代に軍の伝令として軍民双方の凄惨な現場を体験していたことは読メで初めて知った。読み終えて。昭和天皇こそ少なくともサイパンが陥落して敗戦が決定的になった時に自決すべきだった。天皇制を維持したければ譲位すればよかろう。みんなあんたのために傷つき死んだのだ。バックナー中将の戦死は初めの方だと思っていたが最後の摩文仁陥落寸前のことだったのだな。2022/05/18
みさと
4
沖縄のこころ、戦争を憎み全力を尽くしてそれを阻止しようとはかるこころ。同時に、多くの点で朝鮮、中国、アジアの人々のこころに通じるものを持っている。日本人はこのこころを理解して初めてアジアにこころを開くことにもなる。沖縄のこころを、沖縄戦での住民の犠牲の大きさを抜きにして語ることはできない。沖縄の犠牲は、近代以降100年の日本による支配の帰結であった。鉄血勤皇隊として動員された大田昌秀が自身の体験した凄惨な沖縄戦の実相を掘り起こし、平和を求める沖縄の原点を語る。日本にいては見えない日本の姿が沖縄から見える。2020/04/04
ア
4
沖縄返還の年(1972年)初版。著者は、社会学者であり、第4代沖縄県知事であった大田昌秀。著者の経験と調査をもとに沖縄戦が描かれる。大本営や沖縄守備隊首脳陣の発言や決断に苛立ちを覚えるとともに、沖縄戦のむごさに胸が締め付けられた。2018/11/09