内容説明
祖母の旧友ヴィルパリジ夫人のサロンで、「私」はゲルマント公爵夫人とついに同席。芸術、噂話、ドレフュス事件など、社交界の会話の優雅な空疎さを知る。家では祖母の体調が悪化。母、医師、女中に見守られ、死は「祖母をうら若い乙女のすがたで横たえる」。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
187
★『失われた時を求めて』岩波文庫版全14巻完読プロジェクト、 https://bookmeter.com/users/512174/bookcases/11525156 今回は、第6巻『ゲルマントのほうⅡ』、自己ベスト更新です。本巻は、最薄巻ですが、それでも400頁超あります。鼻もちならない貴族が多いので、民衆がフランス革命を起こすのも納得です。続いて第7巻『ゲルマントのほうⅢ』へ。トータルの感想は、全14巻完読後に。 2020/02/08
lily
148
プルーストが学生時代から出入りしていたサロンの再現と祖母の死に際への立ち会いの巻。サロンは虚栄心で構成された劇場みたいなもので、あまり心地よい場所でもなければ、会話も低俗で有益な時間とも言えない。死に際の描写は、虚無と絶望からの解放に重点が置かれていて重たくない。病弱だったプルーストの死生観が覗けて面白かった。死の恐れをここで中和させたのかも。2019/08/15
のっち♬
90
祖母の旧友ヴィルパリジ夫人のサロンに集まった「三流の者」たち。戯画化された登場人物を通して社交界の虚妄や人間の二面性が描き出され、我々が抱く意見や人間関係は不動のように見えても実際は「果てしなくゆれ動いている」ことを指摘する。かなりの文章量が割かれた皮肉や当てこすりに満ちた会話は、その背景の注釈と併せ読みしつつ理解するのは容易ではなかった。終盤は祖母の病気と死が描かれており、彼女の精神の崩壊過程に重点を置いた冷徹な筆致はいかにも著者らしい。同性愛者シャルリュスの接近や公衆トイレの管理人を用いた風刺も強烈。2020/10/07
藤月はな(灯れ松明の火)
59
社交界の知識がなければ通じない比喩に唖然。皮肉を込めているといえ、比喩自体も長いので、文章をどう、切ればいいか、分からず、混乱します。せめて使用人の人にも伝わりやすい言葉を使ってください!祖母の苦しんだ闘病の末の臨終と社交界の煌びやかさに隠れながら刺を出すユダヤ人差別が胸の奥に重みを与えてくれます。その分、主人公の性癖や人格を揺さぶるシャルリスの言葉に私のブラック乙女人格(登場人物で気に食わない男性キャラが出て、どうしてもそいつを虐めたい時や腐女子な時に出ますw)がドキドキしますwww2015/03/03
ケイトKATE
58
ついに、憧れのゲルマント公爵夫人と対面を果たすことができた「私」。ところが、公爵夫人は冗談ばかりの会話をするので「私」は拍子抜けしてしまう。前巻同様、想像と実際の落差に戸惑う描写が巧みである。『ゲルマントのほう』の舞台はドレフュス事件の時代で、当時の揺れる人々の反応が興味深い。後半は最愛の祖母が病から死に至る過程が描かれている。病によって衰弱していく祖母の姿と、死を受け止められない「私」の心の葛藤が冷徹に書いており、辛いが引き込まれる。改めて、プルーストが描く人間の心理描写は奥深く圧倒される。2022/12/21