出版社内容情報
それから二年後,私はノルマンディーの保養地バルベックに滞在した.上流社交界のゲルマント一族との交際,「花咲く乙女たち」の一人アルベルチーヌの抗いがたい魅惑,ユダヤ人家庭での夕食,画家エルスチールのアトリエで触れる芸術創造の営み.海辺のリゾート地,ひと夏の燦めきを描く,第二部第二篇「土地の名―土地」.(全14冊)
内容説明
それから二年後、「私」はノルマンディーの保養地バルベックに滞在した。上流社交界のゲルマント一族との交際、「花咲く乙女たち」の抗いがたい魅惑、ユダヤ人家庭での夕食、画家エルスチールのアトリエで触れる芸術創造の営み。ひと夏の海辺の燦めき。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
195
★『失われた時を求めて』岩波文庫版全14巻完読プロジェクト、 https://bookmeter.com/users/512174/bookcases/11525156 今回は、第4巻『花咲く乙女たちのかげにⅡ』、ひと夏のバカンスの巻でした。しかし700頁強もかけるとは・・・ 前半の山場、第4巻を読み終えたので、全14巻完読の道筋が見えてきました。続いて第5巻『ゲルマントのほうⅠ』へ。トータルの感想は、全14巻完読後に。 2020/02/04
lily
154
本命の恋は小休止?!新たなひと夏の三角関係。主人公の知性と感性と神経症の閾値までの純情とそれ以降の反映が認められない新たな世界観と官能の快楽だけの存在、まんまとリップサービスに乗っかる私を冷静に分析する私。今までに出会ったことがない、100人分の思考量は優に超えるくらいキャラクターが面白過ぎるから、是非読んでもらえたら。この章だけでも独立した世界に誇る文学作品に相当するから全巻読破が億劫な人は、この4巻だけでも夏休みの充実感を満たすことができるよ。2019/08/14
のっち♬
95
「私」が過ごしたリゾート地でのひと夏の思い出。そこへ集まる人々が精彩豊かに描き出され、新たな環境や人との接触に対して様々な分析や考察が加えられる。「様々なものを部屋の中に存在させるのは我々の注意力の働きであり、それらを撤去して我々の入る余地をつくってくれるのは習慣の力である」後半の『花咲く乙女たち』との淡い交友では、時間の流れが注意力により膨張したかのように局面ごとに綿密な心理描写が施される。著者が片思いで相当苦悩していたのがここでも伝わってくる。誰しもが何かを学びとる思春期の煌めきとほろ苦さを綴った巻。2020/09/30
やいっち
77
知られているように、プルーストのこの小説は、音楽や絵画(絵の言及やイメージ)が比喩の形で、あるいはほとんど直接的に、ふんだんに使われている。 本訳書では吉川 一義氏が、他の研究者の研究成果も含め、ご自身の研究調査の結果を注の形で示されている。
syaori
59
舞台は海辺の避暑地バルベック。汽車や馬車の窓をよぎる「私」の欲望を誘う、しかし再び会うことはない娘たちのなかから花咲く乙女たちが現れます。ある対象の見え方が、時や近付く角度によって様々に変わるのを眺めるのはこの本の楽しみの一つだと思うのですが、その対象が華やかな一団となるとひときわ鮮やかで、美しい印象の連なりをうっとり追うしかありません。祖母の学友でゲルマント一族のヴィルパリジ夫人から、より一族の中心に近いサン=ルーやシャルリュス男爵につながっていく、「ゲルマントのほう」へ向けた準備にも注目しつつ次巻へ。2017/06/28