岩波文庫
ファウスト博士 〈下〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 291p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784003243466
  • NDC分類 943
  • Cコード C0197

出版社内容情報

現代のファウストに擬せられる一天才作曲家の,芸術家としての悲劇的生涯に托して作者が追求するものは何なのか.芸術の不毛と孤立とを娼婦からの病毒感染による霊感という「悪魔との契約」によって乗りきろうとして破滅する主人公.ナチズムの毒に冒され破滅へむかってつき進むドイツ,重い時代の流れがたくみに描かれる.

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

やいっち

65
トーマス・マンやハイデッガーなどを読む際に感じるのは、これは、ドイツ(ヨーロッパ)という地を知らない、紋切り型の知識しか持ち合わせのない者の偏見に過ぎないのかもしれないが、「魔の山」というか「黒い森」である。  ハイデッガー(ハイデガー)の文章など、晦渋というべきか、鬱蒼と木々の生い茂る、魔物が棲むと感じられてならない、原始の森に分け入ってしまったものの、一歩一歩の遅疑逡巡であり悔悟であり開き直りであり闇の世界への親和に満ちているように感じられる。

ケイトKATE

26
アドリアン・レーヴェルキューンの生涯は、近代ドイツ史の栄光と転落に照らし合わせている。アドリアンは、革新にこだわり生きていたが、失恋、親友や可愛がっていた甥の死という悲しみから、傑作『ファウスト博士の嘆き』を作曲した。急速な進歩と近代化に囚われ足元を見ずに破滅したことドイツに対し、アドリアンは、人間本来持っている感情を取り戻したことで、非人間化から脱することができた。『ファウスト博士』は、トーマス・マンがドイツと真正面から向き合ったことで書くことができた作品であると言えよう。2024/06/19

こうすけ

17
『魔の山』以来のトーマス・マン。ナチスドイツ政権下を舞台に、『ファウスト』に着想を得て、天才音楽家の生涯を描く、と聞いて期待大。しかし、なんたる読みにくさ……。三巻一気買いしてなければ間違いなく途中で挫折していた。最後の最後、エピローグでようやくグッとくる。物語そのものは面白いが、合間合間にこれでもかと繰り出される音楽理論や神学論が苦しく、「あえて脱線するが……」みたいな作者の注釈が段々腹立ってくるほどに。ただ、ナチスドイツや敗戦を、ドイツ人がどう受け止めたのかがよくわかる。2023/06/28

てれまこし

7
音楽は理性を飛び越えて感情に直接訴えかけるという意味でより始原的。だが音楽が自らを意識したときに、それは厳密な形式として理解される。内容は形式の問題に、表現は技術的な問題へと還元され、音楽は因習に堕す。それは一定の形式のなかに囚われ、自由な表現の余地はもはやないように見える。この形式の檻を破るには天才的な打開(突破)が必要であり、そこに悪魔的な介入が求められる余地がある。社会もまたそうであるか。ルターやニーチェの天才もこうした意味での悪魔であるが、その打開にはナチズムのような狂気に堕しかねない危険が伴う。2018/12/13

ソングライン

5
最後のアドリアンの悪魔との契約が自分の作曲を生んだとの告白そして大戦でのドイツの敗北への予感を描きつつ物語は終了します。芸術家の生涯を描いていますが、音楽の素晴らしさではなく、やるせない虚無感を感じました。2016/06/08

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