内容説明
イェイツ(1865‐1939)は、アングロ・アイリッシュのプロテスタントとしてアイルランド文芸復興に携わった特異な詩人であり劇作家であった。変貌し続けたその詩は、芸術至上主義、象徴主義、神秘主義、オカルティズム、アイルランドの民族意識と神話伝説等々の複合体とでも言うほかはない。その全体像を伝えるべく54篇を収録。
目次
幸福な羊飼の歌
落葉
かりそめのもの
さらわれた子供
柳の園に来て
時の十字架にかけられた薔薇に
ファーガスとドルイド僧
世界の薔薇
平和の薔薇
戦いの薔薇〔ほか〕
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
112
ノーベル文学集を受賞したアイルランドの詩人、イェイツの詩54編。アイルランドの文化や歴史、伝説、神秘主義といった要素が含まれた詩の内容を掴むのは容易ではなかった。それでもイェイツの詩には物語性があり、はっきりとしたイメージを核にしているので、作者の想いやヴィジョンは伝わってくる。物質主義が蔓延して、戦争の嵐が吹き荒れる世界で、精神性を失わないで生きるためにイェイツは詩を書き続けたのだろう。短めの詩もいくつか載っていて、そういったものには苦いユーモアが感じられるのが面白かった。2014/07/18
lily
111
ブラックコーヒーと苺のショートケーキセットのような詩集。最後まで苺を取っておいてね。苦さの中でも赤い希望をみていれば、それが今日を生きる理由になるのだよ。イェイツの生き方そのものが芸術だった。2020/11/24
KAZOO
67
イェイツの詩については、今原文で読んで入るのですが遅々として進まないのでこちらの本を先に読み直してしまいました。アイルランドの詩人で日本びいきでノーベル賞も受賞されています。対訳ということで新設なので日本語で少し理解不能の時には原文があるので便利です。訳詩になると訳す人の思い入れなどがあったりするので、一長一短があると感じました。ここに収められた詩の選択はいいと感じています。2015/05/18
燃えつきた棒
47
大江健三郎の小説「燃えあがる緑の木」を読んでいて、タイトルをはじめとして、大江があまりにも度々イェイツの詩を参照するので、行きがかり上、読んでみた。 結果は懸念していたとおり、僕には敷居が高すぎた。 ほとんど心に引っ掛かる詩句さえなかったのだが、今回も最後に「ベン・バルベンの下で」にたどり着いて、少し救われた。2019/09/21
ぺったらぺたら子
25
殆ど読めたとは言えないが忘れがたい。英詩は確かに対訳で読むのが良い。全体としてノスタルジーを基調としながら、最初の、古雅で唯美な世界から、社会性、失われていく美や命への嘆きと怒り、政治と戦い、個を見つめる視線、そして老い、と、ちょっと金子光晴を連想するような変遷があるのだが、そういや光晴、イエイツについて本を書いていたはず。2016/11/27