出版社内容情報
「ふるさとは遠きにありて思ふもの/そして悲しくうたふもの」――孤独の中にあって犀星は人の世のもろもろの人間くささを歌いつづけた.厖大な詩業のうちから作者自らがここに選びぬいた二一四の詩篇に,読者は芳醇で清澄な古酒の味わいにも似たしみじみとした詩情をおぼえ,心うたれるにちがいない.初出一覧を付した.
内容説明
「ふるさとは遠きにありて思ふもの/そして悲しくうたふもの」―孤独の中にあって犀星(一八八九‐一九六二)は人の世のもろもろの人間くささを歌いつづけた。厖大な詩業のうちから作者自らが選びぬいた二百十四の詩篇に、読者は芳醇な古酒の味わいにも似たしみじみとした詩情をおぼえ、心うたれるにちがいない。
目次
抒情小曲集
青き魚を釣る人
鳥雀集
忘春詩集
愛の詩集
第二愛の詩集
星より来れる者
寂しき都会
田舎の花
高麗の花
故郷図絵集
「鉄集」前後
鉄別集
美以久佐
動物詩集
哈爾浜詩集
集にもたれる詩
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メタボン
29
☆☆☆☆ 何度も読んでいるせいか、やはり「小景異情」が突出して良い。古めかしくもゆかしい言葉、リズム、リフレインが心にしみてくる。2015/12/28
あきあかね
23
「ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの よしや うらぶれて異土の乞食(かたゐ)となるとても 帰るところにあるまじや ひとり都のゆふぐれに ふるさとおもひ涙ぐむ そのこころもて 遠きみやこにかへらばや 遠きみやこにかへらばや」 室生犀星の詩というと上に挙げたものが人口に膾炙しているが、詩集全体を読むと、犀星の詩の幅の広さが感じられる。 哀しみや寂しさ、孤独を詠った詩もあれば、ひぐらしのすばらしい夏の歌や雪どけの中のうすみどりの木の芽といった小さな生へ向けた温かな眼差しが⇒2021/10/15
michel
19
★4.0。初の室生犀星。彼の中に流れる"物書きの血"が見えるかのよう。彼の生きた人生が、彼の見たもの聞いたものが、そのまま肌で感じられるような自選集。センスがいい、というよりは…真摯に言葉を紡ぎ出そうとする静かな努力の息吹の賜物。彼の、言葉への愛がひしと感じられる詩集ではないか。他作品も読んでみたい。2019/12/01
❁Lei❁
16
犀星の小説も瑞々しくて素敵ですが、やはり詩のほうが犀星自身の五感で得たものを直接受け取れる気がして好きです。窓から射す朝日の下、ジリジリと鳴く蝉の声に耳を傾けながらこの本を読むことができて、今年はいい夏でした。犀星のおかげで、きらいだった故郷の緑も今では懐かしく思われます。都会はゆっくり歩ける土手もなく、したがって川も眺められません。どこかよそよそしく、まだ旅行者という心持ちがします。こんな感覚を犀星は綴っていて、シンパシーと心強さを覚えました。慣れない場所に行くときに携えたいお守りのような本です。2023/09/04
❁Lei❁
14
犀星自選の詩集。彼がどんな詩を愛し、どんな感情を大切にしていたのかが透けて見えるようでした。朝と蝉の詩が多いこと、そしてそんな歌が私も好きです。自然や人間愛を悠々と歌うイメージでしたが、案外ペシミスティックな作品も多くて驚きました。淡々とした希死念慮といいますか、そんなところもまた好きです。晩年の方の詩は未収録のためいくつかのお気に入りの詩がないのが寂しいですが、それを凌ぐほど好きな一冊です。犀星の趣味とこだわりが詰まっています。2023/07/27