内容説明
東京電力福島第一原発の事故は、福島県の学校や子どもたちに深刻な影響を及ぼした。学校の臨時移転・休業、生徒たちの避難や転校、放射能への不安と向き合う日常…。こうした状況を子どもたちはどう受け止めているのか。そして、いま教育は何をすべきか。『朝日新聞』「声」などへの投稿で話題を呼んだ福島の高校教諭と、丹念に現地調査を続ける教育学者が根本から問いかける。
目次
はじめに 3・11後の二つの学校風景
第1章 いま教育は命を育んでいるか―福島の学校現場から
第2章 3・11が教育にもらたしたもの―福島の学校と子どもたち
おわりに 人間が人間らしく生きるための教育へ
著者等紹介
中村晋[ナカムラススム]
1967年生まれ。東北大学文学部文学科中国文学専攻卒業。宮城県の高校教諭を経て、現在福島市内の県立高校に勤務。1995年より俳句を作り始め、今に至る。俳誌『海程』(金子兜太主宰)同人。2005年福島県文学賞俳句部門正賞受賞。2009年海程新人賞受賞。2013年海程会賞受賞
大森直樹[オオモリナオキ]
1965年生まれ。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。現在、東京学芸大学教育実践研究支援センター准教授。専攻は、教育学、教育史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
12
最近の学校現場の声を聴くと、学級崩壊もあるという。今に始まったわけではない。教師が子供からなめられている。教師不信(8頁)。この一点である。弱者を犠牲にしながら成り立っている社会(11頁)。この表現は超格差社会そのものである。福島の子供は2011年当時、見殺しにされていたような描写(18頁)。そんなところに居てはならない。大人になれないぞ。そんな忠言を教員は言えないのか。御身大切ってことだろう。「直ちに健康被害はない」というときの、「直ちに」という副詞の時間感覚(間隔)は、今後大いに問題になるであろう。2014/02/03
おのぴき
1
高校教員中村と教育学者大森の二人が、原発震災後の福島の教育現場について書いた一冊。ブックレットだったので非常に早く読み終えることができた。中村の学力や学ぶことの意義などについては賛同できる部分があったのだが、彼の句に共感を覚えることはあまりなかった。これは県外に出ているせいなのだろうか?福島に戻った時に読んでみるとまた印象が変わるのかもしれない。2013/09/16
在我壷中
1
『被曝検査受けねば避難受け付けぬと雨を濡れ来し親子帰さる』 『被曝の日々を振り廻されし転校生模擬面接で夢語り泣く』 避難場所、指定された高校の現場 被曝検査担当へは「我々は検査してこいと云われただけ定刻には帰ります」定刻後に検査へ来た人には『今日の業務終了』を伝えてくれと・・・【教育一時禁止区域】避難指示区域へはこうした事が・・・行政は人が行うこと、教育は人(先生)が行うこと・・・私には、現状我が国を【未熟なる民主主義】と曾てには『非理法権天』と今には『非理権天法』と、法が権を天をも支配、差配するのかと 2013/09/19
有智 麻耶
0
震災から早5年。風化させまいと奮闘する人々がいる一方で、被災地のことなど忘れて暮らしている人がいる。どちらがいい、どちらが悪いという問題ではないが、せめて何が起こっていたのかを知る努力くらいはしてほしいと思う。大森氏の別の本では、震災と離れて自分の主張を長々と述べていたのに辟易したが、この本は震災の事後対応について、資料をもとにしっかりと考えられていた。こうしたものを読むと、子どもは未来を担う存在なのだと再認識させられる。2016/03/11
samandabadra
0
現場の声と、鳥瞰的な状況の二つのアプローチで迫った出版時期(2013年8月)の福島の教育の現状。命を守ることより教育や行政の秩序を守ることがそんなに大事なのかという声が聞こえる一冊2014/05/13