出版社内容情報
恋人の声が導く、未だ見ぬ「そこ」へ、僕は向かう。
僕らの島に、西の鷲の軍隊がやってくる。それを阻止するため、僕らは島の秘密と引き替えに、東の龍と結ぶ。だがその結果、悲劇は起こった。成人儀式、恋、聖地への旅・・・・・・。清冽にして幻想的な、現代の神話。
内容説明
恋人の声に導かれ、まだ見ぬ懐かしい場所へと降りてゆく。南の島の眩しさと冥さ。清冽で詩的なヴィジョン溢れる、現代の神話。
著者等紹介
赤坂真理[アカサカマリ]
1964年東京生まれ。『ミューズ』『ヴァイブレータ』など、体感を伝える密度とスピードのある文体で共感を得る
大島梢[オオシマコズエ]
1978年横浜生まれ。画家。植物や昆虫、人工物などのモチーフを大胆で幻想的な構図に展開し、超細密なタッチで描き出すその作品は、国内外で高い評価を得ている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ユカ
36
図書館で。文芸ってこういうことを言うんだなと、まさに文章の芸術、な本でした。詩的だけど、場面はわりと明瞭に想像できました。昔話のイザナキがイザナミを探しに黄泉の国へいくお話を思い出したり。挿絵も雰囲気があり、素敵です。舞台は沖縄地方なのかな、そちらの文化や沖縄戦を想起させる記述がされています。戦争、武力、エネルギーなど、問題提起もされているのかなと感じました。深くてコクと苦味をもったコーヒー、のイメージの本。2014/06/26
とよぽん
18
赤坂真理さんは「愛と暴力の戦後とその後」を書いた作家、という印象が強く、「太陽の涙」は、同じ作者かと思うほど趣きの異なる作品だった。人類の過去と未来を、自然と社会の不思議な関係性の中で描いた物語。神秘的な世界観が表されている。2018/07/22
遠い日
13
物語的な起伏というより、感覚を探りつつ奔放に描いた詩の世界と精神がここにはある。そして、原初の世界観を取り込みつつも、強烈な現代世界批判も感じられる。発行は2008年。モデルとなった舞台はあの島しかないだろう。まるで、あの大事故の預言のようでもある。幻想のなかに硬質な異物のように鈍く光る金属の匂い。馬琴から生れでる美しい音楽。渾然とした美にゆめゆめ取り込まれてはならない。2016/06/09
R子
13
太陽の涙から生まれた島人たちの物語。終盤の内容が全然頭に入ってこなかった涙。月からやって来た男が、太陽のしずくの利用方法を島人たちに伝授したという伝説や、ある儀式によって、少年の聴覚が研ぎ澄まされていく描写は引き込まれました。2014/01/18
k-katayama
9
この感覚は、久しく忘れていた。そうだ、詩集だ。詩集の読後感。そして、その感覚を限りなく高める挿絵の効果。まさに、詩の世界観。 しかし、一方で、日米安保条約下の沖縄の不幸を彷彿させる。新エネルギーとしての核燃料サイクルの危険を感じさせる。現代の日本の危機を、太古の神話になぞらえ、詩集の世界観をまといながら、読者に辛辣につきつけてくる感覚が否めない。読者としての私は、そんな現実と、虚構の詩の世界を行きつ戻りつしながら、弱者の悲哀を聞いた気がした。読者である私に「多数決は怖い」との印象を強く残した作品だった。2015/12/28