内容説明
法は実践理性においてどのような役割を果たしているのか。その問いへの探究から、「国民代表」の意義や司法権・違憲審査の果たすべき役割をめぐる考察へ。現代的課題と原理的問題の探究とが円環をなす、長谷部憲法学の真骨頂。
目次
1 実践・法・正義(アンドレイ・マルモアの社会慣行論;アラステア・マッキンタイアにおける実践と政治;法・権利・財産―ミシェル・ヴィレイの法思想に関する覚書;カントの法理論に関する覚え書き)
2 民主政と全国民の代表(日本における法治国概念の継受―行政法学での縮減と憲法学での拡張;国民代表の概念について;世代間の均衡と全国民の代表;比較の中の内閣法制局)
3 司法権と違憲審査(多元的民主政観と違憲審査―オルソン流集合行為論再考;木村草太『憲法の急所』(羽鳥書店、2011)
1人別枠方式の非合理性―平成23年3月23日大法廷判決について
投票価値の較差を理由とする選挙無効判決の帰結
憲法判例の権威について
裁判官の良心・再訪
司法権の概念―「事件性」に関する覚書
表現活動の間接的・付随的制約
政党機関紙配布事件判決)
著者等紹介
長谷部恭男[ハセベヤスオ]
1956年生。1979年東京大学法学部卒業。現在、東京大学法学部教授。専攻は憲法学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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void
3
【★★★★☆】初出論文は'09-12年。国民代表と選挙関連のみ。そもそも過疎地域への配慮をその地域に関連する議員の増加で対応しようとする理屈は、「全国民の代表」からも、配慮方法からも認めがたい。選挙無効の可能性については、小選挙区よりも影響の大きい中選挙区制だった80年台から反対意見の中でだが存在したし、小選挙区比例代表並列制への移行に伴う過渡的な配慮も既に失効済。(高裁でも無効判決が出始めているし、)「最高裁が事情判決の法理をとることなく、選挙区ごとの選挙無効の判断を下す可能性は十分ある」(189頁)。2013/12/02
すずき
1
最新の「憲法の論理」よりも憲法学との関連が分かりやすい論文が多い。論文集であり、各論文同士のつながりは薄いがそれでも本書全体を通じ一貫して、成文法に縛られない一般的道徳理論と実定法の結節点としての憲法、道徳理論・実践理性への「窓口」として実定法の規定する準則を打ち消すものとしての憲法、単なる文言解釈に留まらずかつ道徳原則との一体化したものでもない憲法というテーゼを読み取ることができる。自分自身憲法学については不勉強で、理解が追いつかないところもあるが、法哲学者への言及も多く楽しく読める部分も多い。2018/09/23