Crest books
奇跡も語る者がいなければ

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 366p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784105900434
  • NDC分類 933
  • Cコード C0397

内容説明

イングランド北部のある通り。夏の最後の一日がはじまる。夕刻に起こる凶事を、誰ひとり知る由もないまま―。22番地の小さな眼鏡をかけた女子学生。彼女を密かに恋する18番地のドライアイの青年。19番地の双子の兄弟。20番地の口ひげの老人。そして、16番地の大やけどを負った男と、その小さな娘…。通りの住人たちの普段どおりの一日がことこまかに記され、そこに、22番地の女の子の、3年後の日常が撚りあわされてゆく。無名の人びとの生と死を、斬新な文体と恐るべき完成度で結晶させた現代の聖なる物語。

著者等紹介

マグレガー,ジョン[マグレガー,ジョン][McGregor,Jon]
1976年、司祭である父の任地、バーミューダ島で生まれる。ほどなく英国に移り、ノーフォーク州で育つ。ブラッドフォード大学卒業後、アルバイトをしながら小説を執筆。2002年発表のデビュー長篇『奇跡も語る者がいなければ』がブッカー賞候補となり、一躍文学界の寵児に。同作で、サマセット・モーム賞、ベティ・トラスク賞を受賞。ソーシャルワーカーの妻とノッティンガムに暮らす
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

遥かなる想い

144
イングランドのある住宅街の一日を描いた物語である。 何気ない街で 起こった出来事と、その 三年後の少女の姿が 交互に語られる。 一体 この街で 何が起こったのか?そして 三年後の今に どう繋がっていくのか? 著者の意図なのか、名前ではなく番地で 語られる、 名もない人々の風景 … ひどく 透明で映像的な 印象の作品だった。2019/08/09

優希

82
密やかな奇跡が美しかったです。特別なことではなく、日常の中に誰にも知られることなく起きる奇跡。夏の終わりのある一日が様々な人々によって紡がれていき、小さな喜びや悩みなどが見えました。些細なことでもそれぞれの人にとってはドラマのような出来事なのだと思います。日々の生活は小さな奇跡の連続で出来上がっていると言えるでしょう。そこに一人の少女の3年後の姿が入れ込まれ、物語は紡がれていきます。その日の最後の出来事に向かって。繰り返される詩的な文章が生と死を彩り、聖なる物語へと結晶させていくのが心地よく感じました。2015/12/09

踊る猫

27
私が呼吸をすれば酸素が減る。私が歩けば足跡ができる。私がなすことはそうして世界に影響を与え、確実に世界を変える。そんなミクロな交流がマクロに世界を動かし、カオスを生み出している……と大上段に構えてしまったが、著者が訴えたいのはそうした世界が豊かなカオスである事実(そして、その事実こそが「奇跡」であること)なのではないだろうかと思った。イギリス映画を連想しながら読んだ。例えば『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のような映画とこの本は似ていないだろうか。「いぶし銀のヒューマン・ドラマ」と片付けると安っぽくなるが2022/07/19

kaze

13
いい話であった。まず文章がいい。とても詩的だ。それぞれの登場人物に対する筆者の視線もいい。適切な距離を置きつつ温かさもある。月並みな感想だけれど、誰にでも物語があるのだなと思った。みんな自分の人生の小さな物語を誰かに見てもらいたいのだ。ドライアイの男の子の写真が彼らの物語を見守る神視点の代用になっていて、それが眼鏡の女の子を救うことになる。とても素敵。 2023/07/22

葉子

12
ある通りの人々の一日を書き連ねているだけで、こんなに詩的になるのはこの著者の不思議な文体のためだろうか。帯に書いてあった天使のように書く、と言うのは素敵な表現だとおもう。似ているようで違う言葉で語り、見えているようで見えてないものを見せてくれる。そんな本だ。奇跡も語る者がいなければ奇跡とは呼べないし、事実も語る者がいなければまぼろしになる。そんな本だ。たくさん出てくる人たちの中でも、20番地の老夫婦が好き。怒鳴ることないわ、すぐ後ろにいるんだもの。2022/12/08

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/62924
  • ご注意事項