出版社内容情報
19世紀フランス文壇の鬼才リラダン(1838‐1889)の,人間性に対する深き洞察と峻厳なる批判と,その芸術境から生れ出る豪華典麗な夢想とが,渾然として融合し,絢爛たる唐草模様の絵巻物となったのがこの作である.読者はここに,マラルメによって「大ヴィリエ」と呼ばれた作者の高貴なる魂が,颯爽として天翔けるのを仰望しうるであろう.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
evifrei
13
メンロー・パークの魔術師と称される電気学者エディソン氏の元に、旧知の恩人であるエワルド卿が訪れる。彼は勝利のヴィーナスを思わせる完璧な容姿をした恋人が余りに低俗な心魂の持ち主であった事から幻滅し、その恋のために自殺しようと考えていた。エディソン氏はエワルド卿の恩に報いるため自殺を止め、彼のために理想のイヴたるアダリーを生み出す事を約束する―。旧字体・旧仮名遣いで書かれているのだが、人工機械の描写などは絡み付く様な独特な甘さを感じる。初読は創元版だったが、何と無く岩波の方が読みやすい気がする。2020/06/12
東京湾
7
「私は幻覚を打ち倒します!閉じ籠めてしまいます!この幻影の中に宿る『理想』そのものが、『触知し得るもの』『聞知し得るもの』『物質化されたもの』ものとして、貴君の感覚に初めて現れ出るように、是が非でもしてみせます」焦がれたのはその美貌。忌むべきはその魂。恋愛におけるありふれた失望に耐えきれず、死を思うまでに懊悩する男にもたらされたのは、科学技術が生み出した、人造のイヴだった。「アンドロイド」の語源にもなった19世紀フランス発の古典SF。感想は下巻2020/03/19
twinsun
6
エディソンが現代のプロメテウスとしてフランケンシュタイン博士に続き人造人間製造に挑むが物語は既に完成されたプランの実行を巡る後日談である。リラダンの記述を支えるエネルギーは技術の未来をできる限り見通してみたいという知的好奇心に満ち満ちており、人間の想像の後追いにすぎない技術の進歩をあざ笑っているような向きもある。衣食足りた後はこうして暇つぶしをするしかないのか。2023/05/25
ぜっとん
3
面白すぎんだろ……主な感想は下巻に。2013/11/29
ひでお
2
あのトーマス・エジソンが人造人間を発明してしまうという衝撃の物語です。上巻では、核心部の手前までですが、SFっぽいお話しかとおもいきや、人生論だったり女性論だったり登場人物が、ひたすら議論を重ねます。時代性もありますが、女性に対する考え方はあまりに一方的だし、一方の当事者エワルド卿も容姿と思想を混同するし価値観が一方的すぎる感があります。下巻ではどう展開するのでしょうか。 なお、戦前の翻訳のため旧仮名遣いや旧字体で慣れが必要かもしれません。2021/09/02