内容説明
怪談を引き寄せる著者、小田イ輔がまたも身体を張って蒐集執筆した渾身の一冊。主婦中心のサークル内で面白半分に始まったコックリさん、その“あしたしぬ”とはいったい?「大人のコックリさん」、実家の持っている山に不法投棄がされるようになり、怒った祖父があるアイデアで撃退を始めたが…「嘘から出たまこと」、強烈に祟るというある物件を調べていた著者が出会った関係者。彼らの話を聴くうちに見えてきた奇妙な闇「たたり喰い」など。全編に纏わりつく怖気と一瞬見える深淵をご堪能ください。
目次
盆踊りにて
立ち傘
朝の異界
事故と縁
一人にしないで
暫定因果
続かぬ因果
砂糖と小麦粉
曼荼羅遺書
南米の鹿〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
150
小田イ輔さんは完全に陽のタイプの作家さんですね。どんな話でも結末は悲しくなりようがないなと心から安心して読めますよ。作品からきっと生来が「人生どうにかなるさ」と考える楽天的な性格の方なのだろうなとうかがえますね。『嘘から出たまこと』十年ほど前にW君の家では、所有する山に色んなゴミが捨てられる不法投棄がされ出して民家から離れている為に犯行現場を押さえる事ができずに困っていた。特にお祖父さんが怒りまくって山の畑の側に小屋を建て夜通し監視したが犯人は姿を見せない。祖父はW君の両親と意見が食い違い家庭で孤立する。2021/03/14
HANA
65
実話怪談集。派手な畳み掛ける作品より、しみじみとした作品が多かったように感じる。怖いというより寂寥感を感じるような。特に「曼荼羅遺書」や「K君の近道」といった少年時代を描いたものにそれが多い。会話だけで構成された「幻覚か幽霊」インターネット黎明期を描いた「あの人の可能性」と個人的にツボに入る話も多数収録されているし。特に後者とは自分の時間軸とも重なる部分があるので、一際身に染みる。その一方で表題作の最後のように読者の想像力に訴えてくるような嫌さを持つ話もあるし。読んでいてやはり上手いなあと思わされました。2018/05/29
ラルル
22
表題になっている話はやはり強烈。祟りを喰う人間などいるのだろうか…。彼のその後が非常に気になるけど、先は聴けないんだろうなぁ2019/05/15
澤水月
22
ラスト固め打ちにヤられる…アロエ、本の題名でもある話など。東北の言葉で語られる高齢者たちの話は味わい深い。それにしても著者、編集Nさんの身が心配…!2018/03/31
pulpo8
15
やはりワールドがあるなぁ、出てくるねぇ小田イ輔。私の中では完全にSF怪談の名手(?)。「幻覚か幽霊」の惚けたやりとりもそういう空気感の漫画っぽくて面白い。「食べられた記憶」はまさにこの感覚、始まった!って感じ。「虫の知らせ、あるいは道連れ」は読後タイトル見直してぐわっとなった。「あの人の可能性」胸が詰まる…。「ころぶ」一輪車が必ずこけるゾーンが見える子供たち、という不思議な話。「間借り希望」だけではないけど、登場人物の思考回路が程よく深くて好き。「祟り喰い」のラスト、これ続きあったりするのかな。2018/05/15