商品詳細戦争が生み出したさまざまな矛盾に切り込む。
東京で学生をしていた仲代庫男は空襲で焼け出され、列車で佐世保の実家へ向かう途上、同年輩の芹沢治子と出会う。長崎の浦上に住むという治子と庫男は文通を始めるが、“新型爆弾”により治子の消息は不明に――。
一瞬にして未来を断たれた原爆被害者、日本人であることを強いながら差別される朝鮮人炭鉱労働者、敗戦前から英語の辞書を買い漁っていた抜け目ない同級生……戦争によって生まれたさまざまな矛盾や理不尽を、富国強兵の象徴であった旧佐世保海軍工廠250トン起重機(クレーン)になぞらえてあぶり出した名作。
著者情報井上光晴[イノウエミツハル]
1926(大正15)年5月15日‐1992(平成4)年5月30日、享年66。福岡県出身。炭鉱労働を経て日本共産党に入党。『書かれざる一章』で党の内情を描いたとされ除名処分に。その後上京し、本格的に作家活動に入る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)