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暗黒の森の中で銃声とともにこだまするうめき声。「来た。鬼が来たんじゃ」。昭和十三年、岡山県北部で起こった伝説の「三十三人殺傷事件」。おとなしく、利発でええ子だったはずの辰男は、なぜ、前代未聞の凶行へと至ったのか。狂気か? 憤怒か? 怨恨か? 古い村の因習と閉ざされた家族の歪な様相、人間の業と性の深淵を掘り下げながら、満月の晩に異形の「鬼」となって疾駈する主人公を濃密な文体で描き出した戦慄の長編小説。話題の女流作家が切り拓いた圧倒的迫力の新境地!
著者情報
岩井志麻子[イワイシマコ]
1964年、岡山県生まれ。99年、短編「ぼっけえ、きょうてえ」で第六回日本ホラー小説大賞を受賞。また、同作に書き下ろし三編を加えた同題の短編集が、ジャンルを超えた質の高い作品性を支持され、第一三回山本周五郎賞を受賞する。恋愛小説『tr´ai c^ay(チャイ・コイ)』で第二回婦人公論文芸賞、『自由恋愛』で第九回島清恋愛文学賞を受賞