内容説明
謎の生命体「こんとん」の取材記者として調査船に乗り込んだ男女。たどり着いた島=こんとんの上で、二人が見たものとは……。(「こんとんの居場所」)
防衛省のシステムに侵入した天才少年ハッカーが開いたのは、人類を次の段階に進める禁断の扉だった。人々が次々と人間の姿を失っていく中、ある親子が再会する。(「白い霧」)
それは滅びか、救済か――。
文藝賞受賞作『いつか深い穴に落ちるまで』(2018)、『孤島の飛来人』(2022)に続く、現代文学の異才による最新作品集!
◆赤坂真理氏、ラランド・ニシダ氏、推薦!
「退屈な日常から、非日常にグラデーションで少しずつ染まっていく感覚。読書の喜びの根源に触れた気がする」
ニシダ(ラランド)
「するする運ばれていくうちに思いがけないところにいて、たとえそれが破滅かもしれなくても、笑えてしまう。ああ、言葉にだけ可能な、こんな旅があるのだ」
赤坂真理(作家)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
梶
30
固体として、個体としての人間を世界へと還元する。境界線を溶かし、「こんとん」へ、「白い霧」へ、人間は変化していく。それは滑稽でもありながら切なく、そして語り手からすれば切実な変化だ。些事まで描き切る描写、結びついていくイメージは端正で、かつ現代的とも言える。 読者の期待の地平を裏切り続けてゆく素晴らしい作家の手腕が光っている作品だ。2024/05/03
押さない
6
10/10 『こんとんの居場所』 開始わずか1ページで純一のだらしなさがよく伝わってくる力量。千夜子の誘惑を見て見ぬふりしあくまで菜摘への思いを貫こうとする無駄な努力がいじらしい。個がなくなり全体《こんとん》に溶け共同意識で錯乱した会話シーンが最高だ。 ちらつく切ない恋心や園田先生の父との会話は、シュールグロテスクな状況に反して純粋さがいっそう際立つ。 綿飴チョコ・甘栗・ラフレシア・一皿100円イカになって会いに行く・バナナは皮ごと食べるよ 2024/04/08
鷹野郷 善後
5
表題作を含む2編の中編小説。文字通り混沌としていた。理不尽とも言えるが、不思議な世界観。世にも奇妙な物語的とも言えるが、どちらの作品もノホホンとした展開ながら、皮肉や社会風刺なども盛り込んである。出てくる登場人物たちも不思議な人たちが多かった。2023/08/01
chuji
5
久喜市立中央図書館の本。2023年4月初版。初出『こんとんの居場所』 「小説トリッパー」2020年秋季号(朝日新聞出版)、『白い霧』書き下ろし。山野辺さんの著作は三作目の読了です。地に足のついていない、実態の無さそうな譚、嫌いではありません。2023/06/28
jolly
5
これはおもしろい。どっちもよかった。想定外にSFだったけど、こういうSFが大好物。期待値ゼロで読むのはやっぱり大事。パムッ。2023/06/22