内容説明
産廃の闇に消えた二つの命。
遺族と向き合う刑事が
執念の捜査で むのは真実? 冤罪?
警察小説のヒットメーカーが満を持して放つ、傑作ヒューマンミステリー!
少ない降水量にもかかわらず、雨により埼玉県の黒部山で土砂崩れが発生した。一人が行方不明になるなか、瓦礫からは不法投棄された産業廃棄物が大量に発見される。県警は事故ではなく事件と判断、捜査一課の奈良健市も捜査に加わる。捜査本部は崩落発生地の所有者特定に着手。すると、意外な人物の名があがった。それは迷宮入りさせてしまった十六年前の殺人事件で、奈良が犯人だと確信し、逮捕直前まで迫った因縁の相手なのだが……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
166
前作は読んでない。奈良という刑事のまなざしの変化に長い時間を読み取った。思い込みは怖ろしい。ましてや警察だもの・・真実は何処に。土砂崩れが発生し少年・壮真の祖母が行方不明になった。そこから不法投棄された産業廃棄物が発見されるのだが、それは16年前に蓋をした未解決殺人事件に繋がるのだ。丁寧に紡がれた吉川さんの新作は地味(褒めてます)だが面白く読んだ。でも、ちょっと長かった(汗)2023/05/06
タイ子
121
埼玉県警奈良刑事シリーズ第2弾。奈良刑事の新人時代と、16年後が交互に描かれるので色んな意味で面白い。雨で崩落事故が起こり女性が行方不明になる。崩落跡地から出てきた大量の不法投棄された産廃物。この地で起きた16年前の未解決殺人事件との因果関係が?産廃業者と住民たちの軋轢、奈良の執着心が事件解決に向かって動き出す。被害者の孫・壮真の存在がすごくいい。信じるに値する人間を見極めるのは難しい。だが、信じる者も必ずいてくれる。自分の眼が曇っていたなら拭うことをしなければ。人間心理を鋭くついた社会派ミステリー。2023/05/06
ma-bo
114
「雨に消えた向日葵」で印象的だった奈良刑事。土砂崩れが起こった現場の原因は不法投棄された産業廃棄物だった。そして奈良が駆け出しの17年前に起こった産廃の最終処理場建設反対派の男性が殺された事件の重要容疑者だった男が関係しているのか?背景に出自や職業に対する偏見があった。奈良刑事の堅実な捜査と、産廃業の実態も分かり読み応え充分の一冊。2023/08/08
タックン
96
最近読んだ(雨に消えた向日葵)がよかったのでその流れで奈良刑事物を再読してみた。 降水量が少なかったのに土砂崩れが起きて1人の行方不明者が出た。その土地を調べてみたら16年前に産業廃棄物反対運動絡みで殺人事件が起き迷宮入りした跡地だった。 16年前に新人刑事として捜査をしていた奈良刑事はその再捜査を含め執念の捜査が光る。 真相がわかると作者の巧妙な伏線のミスリードもあるが、やはり題名の(虚心)わだかまりの心に尽きた。 ダイオキシン問題を発端とした環境問題を訴える人の圧力・欺瞞と産業廃棄物への社会の偏見。2024/01/25
ゆみねこ
96
埼玉県秩父地方で土砂崩れが発生し一人が行方不明に。瓦礫から大量の産業廃棄物が発見され、崩落発生地はかって町を二分した最終処分場建設反対運動の末、反対派のリーダー殺人事件が起きた場所だった。16年前事件捜査に当たり容疑者逮捕の直前まで迫った奈良刑事は、運びこまれた産廃の出どころを追いながら再び16年前の事件と向き合う。疑惑の産廃業者は悪なのか?彼らを庇う警察関係者は本当に金で操られていたのか?読み応え満点、お薦めの一冊!2023/04/22