内容説明
真面目な女子高生、美優は予期しない妊娠をしてしまう。堕胎するには遅すぎると、福祉の手によって奥多摩にあるゲストハウスに預けられる。そこには、明良と華南子という兄妹が、深刻な事情を抱えた子どもたちの里親となって、高齢の母、類子と暮らしていた。貧困、未婚、虐待、難しい背景をもつ里子たちを慈しんで育てる彼らにも、運命に翻弄され絶望を乗り越えた苦しい過去があった。家族の在り方に迫る、長編ミステリー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
331
宇佐美 まことは、新作中心に読んでいる作家です。 タイトルは綺麗なイメージですが、内容は、令和の赤いシリーズのようで、運命に翻弄される家族・人間模様が描かれています。最期には救いがあって良かったですが・・・ https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/97843349144312022/02/21
nobby
255
何とも構成の妙にすっかり泣かされた…十七才の妊婦が行き着いたゲストハウス、そこで出会った歪ながら優しき家族。それを先に読んでいるからこそ、兄から妹へと順に悪い予感のまま残酷に告げられる現実に打ちひしがれる…「そんなことってある?」この人を愛しいと思う気持ちは少しも揺らがない、そんな「ただ一つの恋」ワンラブが温かいワンチームへと変貌みせるのは素敵。陽光が射し込んでも月光に照らされても、家族に求められるのは各々のエゴではなくて、皆そして未来への想い…少なくとも生まれる赤ちゃんをめでたいと喜べる自分でありたい。2022/02/24
いつでも母さん
231
「産んでも親、育てても親」くぅ・・家族の在り方を問われた。現実はこんなに暖かく優しい人ばかりじゃない。みんな幸せになってと思うけれど、安易に『17歳山本美優』が増えませんようにと願ってしまう。いや、特別養子縁組を否定するつもりは端から無い。お腹にいる時だけが愛しいのではない。タイトルの美しい手紙に騙されるところだった。ここまで想えるなら手放さずにと思ってしまうのだ。千沙や明良、華南子のくだりは染みて読めたのに(特に明良と職人・橋本の別れは涙した)この結末かぁ・・宇佐美さん、本作は私には綺麗すぎたよ。2022/02/07
のぶ
231
家族のあり方や親子の関係について考えさせられた小説だった。主人公の山本美優は高校生で妊娠してしまう。交際相手からは逃げられ、両親からも家を追い出されてしまう。絶望に暮れた美優だったが、野中千紗という女性と出会い、ゲストハウスを営んでいる明良と華南子という兄妹の元に身を寄せ、出産までの日々を過ごすことになる。中間部ではこのゲストハウスのスタッフの過去の事情が明らかになる。捨てる神あれば拾う神ありで、人生ギリギリのところで何とかなっていくものだと思った。美優の産んだ子の将来の幸せを願わざるを得ない。2022/02/06
タイ子
222
17歳の女子高生・美優が妊娠、夜の街を徘徊、人生を踏み外す手前で出会った女性はNPO法人経営の千沙。彼女をきっかけにゲストハウス<グリーンゲイブルズ>に入居することに。物語の流れが絶妙に巧い。美優の入居まであらすじめいてると思うと、次章からハウスの里親のこれまでの人生を辿っていきながら、彼らの人物像とその関係を表面化していく。このくだりは何度も胸が痛くなり、何度涙がこぼれたことか。助けた人も誰かに助けられ、そして繋いでいく。その思いは確かに伝わり、家族の形、幸せのカタチをそれぞれに紡いでいくのでしょうね。2022/02/06