内容説明
大人気「怖い絵」シリーズ著者の中野京子さんが名画に描かれたアイテムをもとに、
歴史の謎や闇、社会背景、画家たちの思惑を読み解きます。
絵をじっくり見てみると、意外なものが隠されていて――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
108
表紙のウィリアム・ホルマン・ハント「イザベラとバジルの鉢」フィレンツェの富豪の娘イザベラが鉢を愛おしそうに抱きしめているが、心ここにあらずといった表情。鉢には髑髏の飾り。バジルはピザにも使われるハーブ。語源はギリシャ語の王basileus。王の薬。これはジョヴァンニ・ボッカッチョ「デカメロン」の物語画。髑髏の下にLorenzoと刺繡が見える。家の使用人ロレンツォと恋仲だったが、兄に殺され、彼女は森で殺されたロレンツォの首だけ切り取り鉢に入れて、バジルを育てた。著者の取り上げるモノは、なかなかのモノばかり。2022/02/08
keroppi
77
絵のディテールである描かれたモノに焦点を当て、絵を解説する。ひとつひとつの文は短めだが、一つのモノこだわって絵を語っていくのは、新たな視点を見せてくれ、なかなか面白かった。この「モノ語り」、雑誌「エクラ」に連載されたものだそうだが、その前に「通販生活」に書かれたものもあるようで、そちらも読んでみたい。2022/02/17
読特
42
月刊誌「エクラ」。男性には馴染みのない女性ファッション誌。そこに連載された画の中の「モノ」エッセー。3ページあまりという文字数はあまりに短い。三十二点の名画をあっという間に鑑賞。もう一度最初から絵を見返す。「提灯」「釘」「案山子」「箒」「バジル」「蝶」「ドラゴン」「日傘」「スケート靴」「光輪」「星座」「十字架」「ラッパ」「パイプオルガン」・・・。確かに「モノ」の印象が強く残っている。雑誌の趣旨は紙面での「モノ」売り。実物に触れさせることなく記憶に残す。買わせてしまう。そこが中野節に期待されたのか?2022/02/08
星落秋風五丈原
37
絵の中のものに拘ったエッセイ。するする読める。2022/01/16
kei-zu
36
あとがきによれば、雑誌「通販生活」に20年近く前に連載された記事を契機とするそうで。 とはいえ、たな卸し感はなく、むしろ古今の名作が多く取り上げられている点で楽しく読める。 表紙は、ウィリアム・ホルマン・ハント「イザベラとバジルの鉢」。死んだ恋人の首を収めた鉢にバジルを植えたという「デカメロン」に掲載された物語の発想には、著者が指摘するように「どうしてもついてゆけない部分がある。」 突っ込みを入れながらも、絵画とその背景を掘り起こす著者の視点は、いつも楽しい。2022/01/28