内容説明
縁故主義、相互監視、正常性バイアス、反知性主義、
“コロナ・マッチョ”、『1984』的ディストピア……
なぜ日本はここまで劣化したのか?
・エビデンスを軽んじ、政治効果を優先させた日本の感染症対策
・知的無能が評価される「イディオクラシー」(愚者支配)とは
・“母子癒着”する日米関係とディストピア化する社会
・カミュ『ペスト』に描かれた危機下における大人の市民像
・「王道」と「覇道」――中国はこれからどうなるのか?
・書物という外部への回路がもつ「コモンの再生」の可能性……etc.
社会の病毒をえぐり、再生への道筋を示す真の処方箋!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
49
ブログ記事や色々な媒体に発表した文章を大幅に加筆の上にまとめた論集。かような時局的なタイトルになったのは、<いくつかの論考が今回のパンデミックで可視化された日本社会を深く蝕んでいる「病毒」を扱っているから>。最終章に、大瀧詠一・橋本治・加藤典洋・吉本隆明という、4人の死者へ向け書かれた文章を収録。<この論集は「尖った言葉が行き交う現代日本社会を憂えて、人に親切に接しようとしている男が、思い余ってつい『尖った言葉』を口走ってしまう」典型的な事例としてお読みいただければと思います>と、相変わらずの内田節だ。⇒2023/01/06
ヒデミン@もも
47
隣組と攻撃性のようなことがコロナ禍の初期に身近でも起こった。人間って変わらない学ばないと感じたが、コロナ禍で私達が気がついたことも多い。普通の日常生活の大切さなど。大学がオンライン授業になってから脱落する学生が少なくなったそうだ。オンラインの方が個々に識別できて、社会的承認欲求が得やすいらしい。確かに大学の大きな教室でひっそりと姿を消すのは容易いかも。自宅に八割型読んでない本を飾ってる話しも面白かった。2022/10/08
ま
36
「歴史家は『起きたこと』については『それはなぜ起きたか』を説明してくれるが、『起きでもよかったのに起きなかったこと』については『なぜ起きなかったのか』を教えてはくれない。」(p63)「政治家が『文句があれば次の選挙で落とせばいい』とか『みそぎは済んだ』というような言い回しを好むのは、直近の選挙結果が政策の適否を判定する最終審級であり、歴史的な審判などというものは考慮するに及ばないと彼らが本気で信じているからである。」(p218)2023/06/23
さきん
32
政府のコロナ対策は後手に回ってしまい、著者がずっと携わってきた大学改革も院生の割合減少、研究そのものの減少によって、失敗したといえるが、官僚の論理だと何か動いた、新しく委員会を設立した、コストを削減したことが成功の定義なので、常に成功という扱いになってしまう。それを咎めるデータを持った研究は少なく、政治家もマスコミも弱みを握られていて踏み込めない。コロナはあらゆる問題をより明るみに引っ張る力があったと思った。2021/12/03
Twakiz
28
定期的に読まなくてはいけない内田先生の本.いろいろな媒体にすでに書かれたものを再編集した形のよくあるウチダ本である.読み応えあり.コロナ流行が変えたもの,あぶり出したもの.国際社会の情勢(ウクライナは当然入っていない).反知性主義と日本の政治の凋落について.共同体の形勢について.内田先生が先達とあがめる方々への弔辞.こんなことを考えられる人,書ける人が世の中にいるのねと思い知るだけでも内田先生の本は読む価値があると感じる.2022/03/28