内容説明
警察専門のカウンセラー・唯子(ゆいこ)の仕事は、事件被害者やその家族のケアをすることだ。夫を殺されたのに自分こそ罰を受けるべきだという妻。誘拐犯をかばい嘘の証言をする少女。傷から快復したはずなのに、姉を殺した加害者に復讐した少年……。多くを語らないクライエントが抱える痛みと謎を解決するため、唯子は奔走する。絶望の淵で、人は誰を想い、何を願うのか。そして長い沈黙の後に訪れる、小さいけれど確かな希望――。80万部突破「MOMENT」シリーズ、『dele』の著者が贈る、深く胸に響く物語。
目次
二つ目の傷痕
獣と生きる
夜の影
迷い子の足跡
ほとりを離れる
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
214
なかなかしんどい読書だった。加害者家族でもある高階唯子は警察専門のカウンセラーで、被害者やその家族のケアをする立場だが大学に籍を置く研究員なのだ。被害者家族の雅弘との関係に歪なものを感じて唯子に共感できずにいたが、最終話でなるほどねと腑に落ちた。「他に何ができたでしょう」は、ある被害者の父の言葉だが『大切な人が殺された時、あなたは何を望みますかー』の帯が哀しく苦しい。重いのだが人は弱くて強いを感じさせる連作5話。これはシリーズとしてもう少し読んでみたい。2021/09/22
みっちゃん
175
『dele』に続いて、の本多作品。抑制の効いた文章から、登場人物の内面が細やかに感じられる筆致は相変わらずお見事。大切な家族を理不尽に喪ったひと達に深く共感し、寄り添いながらも、その感情に巻き込まれないように理解を深めていこうとする、主人公のカウンセラーがとても魅力的。徐々に明かされる彼女の過去には驚かされたが、その苦しみの中から、自身の未来を信じていこうとする姿に心打たれた。償いとは、そして赦しとは。考えさせられる。2022/01/13
モルク
160
犯罪被害者に寄り添うカウンセラー、臨床心理士と公認心理士の資格を持つ高階唯子が主人公。唯子自身も父親が人を殺し服役中であり、加害者の娘という重荷をずっと背負っている。彼女のちょっと頑なな考え方に危うさを覚える。そして被害者の息子である雅弘との歪な関係、愛や労りというより依存を感じる。雅弘とのことがあって別れた刑事の仲上がいい人すぎる。そしていつの間にか本多さんの世界に浸っていた。2022/06/21
machi☺︎︎゛
155
名前は知っていたけど初読み作家さん。カウンセラーの高階唯子は犯罪被害者のカウンセリングを仕事としている。でも読んでいてカウンセラーとして優秀なのかどうかは分からないけど、こんなに感情移入していて大丈夫なのかと心配になった。だけどそれが唯子のいいところでもあるのかな。と最後まで読んで思った。人が人をカウンセリングするのだからこの仕事の難しさがよく分かった。唯子の人との距離の取り方がすごく好きだった。2021/12/02
紅はこべ
139
久しぶりの本多孝好だが、だいぶ印象が違う。唯子のカウンセリング、あまり成功しているとは思えないんだけど。元のタイトルの『沈黙を聞かせて』の方がよかった。2022/09/25